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いい心臓・いい人生 【第105号】 第82回日本循環器学会にて
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発行:心臓外科手術情報WEB
http://www.shinzougekashujutsu.com
編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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満開の桜をお楽しみのことと存じます。同時に花粉症に悩まされたりしておら
れないでしょうか。
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この3月23日から25日まで大阪で日本循環器学会が開催され、参加して
参りました。
日本の心臓血管関係の頂点に立つ学会で、内科系・外科系の医師はもちろん、
様々なコメディカルの皆さんや研究者の方々も参加される巨大な学会です。
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私はこれまで開発し進めて来た手術を3つばかり発表しました。いずれも英語
発表のセッションで海外からの参加者もおられたためより意義のある機会に
なりました。
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まず新しい左室形成術の成果を報告しました。座長は東京大学の小野稔教授
と福島県立医大の横山斉教授でした。
心臓移植を受けたくても受けられない心不全患者さんは多数おられます。
例えば年齢や糖尿病などの条件が合わなければ、どんなに必要でも対象外に
なるのです。ドナー心が少ない現状ではやむないことですが、そうした患者
さんたちをこれまで多数お助けして来たので、その成果を報告したわけです。
拡張型心筋症に対する左室形成術は20年前から取り組んで来ましたが、改良に
改良を加え、短時間で確実にできる手術(心尖部凍結左室形成と呼んでます)
を行い、これまでお助けできなかった重症患者さんを元気に退院できるまでに
なりました。発表の後、前向きのご質問をいただき、また会場で移植の権威の
先生から「これは素晴らしい、これからもっと多くの患者さんを助けて」など
のコメントを頂きました。
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次に進化した僧帽弁形成術のお話をしました。座長は東京医科歯科大学の荒井
裕国教授と獨協医大の福田宏嗣教授でした。連続ループ法と呼んでいる方法
で多数の人工腱索が必要な複雑弁形成でも短時間に確実にこなせるため、術野
が狭いMICSでも使えることをお示ししました。これも有用なご質問を頂き、
光栄なことでした。
技術的にやや高度なため、トレーニングが必要ですが、熟練の先生から私も
使ってみたいと言って頂き、お役に立てて嬉しく思いました。これから世の中
に広めたいものです。
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もう一つは虚血性僧帽弁閉鎖不全症を含む機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する
PHOと呼んでいる乳頭筋前方吊り上げを行う僧帽弁形成術を発表しました。
これはすでにAATS(アメリカ胸部外科学会)などでも発表しているため、徐々に
知られるようになっているようですが、その最近の成果を報告し、良いコメント
を頂きました。
あとで会場にて、初対面の先生から「私も先生のPHOを使ったよ。患者さんは
元気になった」とコメントを頂き、光栄なことでした。
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学会では様々な発表があり、大いに参考になりました。
仕事面だけでなく恩師デービッド先生や内外の友人たちと歓談できたのは
何よりのことでした。
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特にデービッド先生には昨夏生まれた長男を紹介し、頭など撫でていただいた
ところ、息子は満面の笑顔で返してくれたので先生は大喜びされ、私には長年
待ちわびた瞬間でした。ちなみにデービッド先生には3人の娘さんがおられます
が息子さんがおられませんでした。しかし一昨年、男子のお孫さんが誕生し、
ぜひ心臓外科医に育ててくださいとお願いしたところこちらも満面の笑みで
返して頂きました。
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またアジアやアメリカなどの友人たちと記念撮影もでき、仲間のありがたさを
しみじみ感じた学会でした。
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大阪の良さを体感できるイベントも多く、皆さん楽しめたようで大慶です。
素晴らしい学会を主催された澤芳樹先生はじめ大阪大学の先生方、お疲れ様
でした。
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平成30年3月29日
医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
米田正始 拝
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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