お便り117 HCMと好酸球増多症で絶体絶命と言われてから社会復帰まで

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世の中には難しい心臓病が今なお多数残されています

この患者さんも山口県からお越しいただいた時には、一瞬どうしようかと不安になったほどでした

 

というのはHCMつまり肥大型心筋症の重症で左心室の心尖部側半分が異常心筋で充満し、動きも悪く、血圧を上回るほどの肺高血圧症があり、僧帽弁閉鎖不全症と三尖弁閉鎖不全症とも高度になっていたからです。

 

加えて大動脈がお腹の部分でほぼ閉塞しており、下肢の血流の流れも危険レベルに近づいているというおまけまでついていました。以前に受けられた下肢バイパス(大腿動脈ー膝窩動脈バイパス)も十分には作動できない状態でした。

 

その背後には好酸球増多症というまだまだ詳細不明な病気がありました。IMG_0441

 

中でも肺高血圧はSuper-systemicと呼ばれる危険な状態で、無理すれば突然心臓が止まる、つまり突然死も起こり得る状態でした。

 

まずは状況をしっかり把握し、手術前に調整できるものは調整し、できるだけ勝てる要素を増やそうということでさっそく入院していただき、治療を開始しました。

 

抗凝固療法や心不全に対する治療そして好酸球への対策を積極的に行い、予想以上に反応がありました。

大動脈内の血栓が溶け、おそらく肺動脈の眼に見えないレベルの血栓も溶けたのでしょうか、肺高血圧も突然死のレベルよりは改善し、手術ができる状態になりました。

 

といっても日本ではこのタイプの肥大型心筋症HCMに対する手術の経験を持つチームはほとんどありません。

 

幸い私たちは左室緻密化障害の患者さんで同様の形をもつ左室の形成術をこれまで数例経験していたこと、そして拡張型心筋症に対する左室形成術は100例以上の経験があること、さらに左室の内部に狭窄を伴うHOCMへの手術経験も多いため、この心尖部肥大型HCMの手術を行いました。

 

結果は上々で左室はほぼ正常の形とパワーを取り戻し、患者さんはまもなくお元気に退院して行かれました。

 

手術前に数週間もかけて治療しましたが、術後は早かったです。退院の時にはご本人さまおよび奥様と一緒に、あの頃は絶望的だったけどうまく行って本当に良かったと喜び合いました。

 

外来でお元気なお顔を拝見するたびに苦しかった頃を想い出します。

 

以下はその患者さんからのメールです。頑張って下さりありがとうございました。

 

*******患者さんからのメール******

 

この度の手術では、大変お世話になり有難うございました。

 

手術を含め73日間の入院期間中、医師・看護師・スタッフの皆様方の温かい対応で
入院生活はとても快適でした。

 

昨年に心臓の病気が見つかり他病院で入院・治療中でしたが、妻が「心臓手術なら米田先生しか
いない」と言うことでお世話になることにしました。

 

手術に向けての血液状態調整や各種検査
状況もその都度説明を頂き不安な気持ちはありませんでした。

 

そして手術前の先生からの親切丁寧な説明を受け家族を含め安心して先生に託することができ手術に対する不安は全くなく前夜も不思議なほど眠れました。

 

術後の経過も順調で看護師の方がびっくりするほどの回復で先生に大変感謝しております。
退院後は自宅周辺を毎日、妻と一緒にウォーキングをしています。

 

以前は長い坂道等では息苦しくなり心臓に負担がかかっていましたが術後は見違える程体調もよく順調に推移しております。
今後も外来でお世話になりますので宜しくお願い致します。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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