お便り130 地元の大病院でも三尖弁形成術は無理と言われて

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三尖弁形成術は通常は形成用のリングをつけるだけの、心臓手術の中では比較的簡単な部類に入るものですが、弁のあちこちが壊れるとまだまだ形成困難な難しい手術となります。

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しかしお若い患者さんや今後妊娠出産をご希望の方々を始め、弁形成術がこれかIMG_1624らの人生に絶対必要、人工弁では困る、という状況は少なくありません。

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私たちはこれまでの複雑な三尖弁形成術で幾多の修羅場を超えてきた経験から様々な方法を駆使して患者さんたちのご要望にお応えしています。

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こうした技術は恩師デービッド先生直伝のものから、その後難しい状況たとえばペースメーカー三尖弁閉鎖不全症や大怪我の時に発生する外傷性三尖弁閉鎖不全症あるいは感染性やリウマチ性三尖弁閉鎖不全症での三尖弁形成術を行う中で培うことができました。

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以下は九州から来られた10代の患者さんのお母さんからのお便りです。

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感染性心内膜炎(略称IE)のため三尖弁が複雑に壊れ、地元の大学病院でもこれは形成不可能つまり人工弁が必要、でもまだこども年齢で人工弁はこれから幾多の危険と苦労が避けられない、だから当面手術は見合わせようという方針でした。その中で、心不全が悪化し、学校での運動もしづらい状況となり、東京などの病院でも断られて私の外来へ来られました。

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弁形成は私の持つ技術を幾つも駆使して無事完遂できました。またまだ高校生で骨を切るのはかわいそうなのでMICSで痛みも少ない形でできました。傷跡もあまり見えません。すでに学校でスポーツが息切れなくこなせるようになっておられます。

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以下はその患者さんのお母様からの礼状です。複雑弁形成を成功させることが、お母さんたちにとって親子の愛情と信頼をかけた闘いであったことがよくわかります。そしてその闘いに勝ったことはその愛情と信頼が本物であった証と思います。感動してしまいました。こんな素晴らしいことのお手伝いができたことに私は感謝しています。

 

患者さんがこれから元気な青春を送られることを楽しみにしています。また外来でお会いしましょう。

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**************** お便り *****************

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米田 正始 先生

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14日に退院いたしました、****の母です。

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この度の入院・手術に際しまして、米田先生はじめスタッフの皆様には大変お世話になり、
ありがとうございました。
退院翌日に、リハビリと頑張ったご褒美を兼ねてのUSJを満喫し、台風が接近するなか
16日に**に戻って参りました。

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3月に感染性心内膜炎を発症し、2か月程かかって治癒したものの、三尖弁の破壊と逆流が
ひどいため手術が必要であることが分かった時には、息子もひどく動揺し葛藤の日々でした。

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しかし本人なりにいろいろと考え、とまどい、悩んで、ようやく手術を受け入れた息子は、
びっくりするほど前向きで、早く手術を受けて元気になりたいと言うまでになりました。

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しかし大学病院では予定していた手術はキャンセル、症状が出るまで未定となり、手術は
人工弁しかないと言われ、いつまで待てばよいのか、15歳で人工弁でよいのかと、親子で
心配な毎日を過ごしておりました。

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病気や手術のこと、弁置換についても色々と調べ、15歳であれば弁形成がいいのではと
思い始めました。本人も絶対に弁形成がいいとの希望があったのですが、地元にいても
医療の地域差を感じておりましたので、県外の病院も検討し始めました。

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都会にいれば普通に受けられる医療も、地方だからといって諦めていいのだろうか。
親である私たちには、ここで妥協しようとは思えませんでした。
〝大切な我が子を守れるのは親しかいない!〟その思いだけだったように思います。

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インターネットで調べた東京の有名な先生や、他の先生にも相談しましたが、全て断られ
てしまいくじけそうになった時期もありました。

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そんな時に米田先生の心臓外科手術情報WEBを見つけ、隅から隅まで読ませていただき
藁にもすがる思いで相談させていただきました。
お忙しい先生だし今回も断られるかもしれない・・・と思っていた私たちに、米田先生は
「一度、私の外来にお越しください。」
と言ってくださいました。その時の私たち家族の喜びといったら、大変なものでした。

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縁あって米田先生とお会いすることができ、
「15歳であれば弁形成にこだわるべき。難しい形成になると思うができると思います。」
と言っていただけた時には、来てよかったと心から思いました。

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そして、この難しい弁形成を完遂していただけたことは、息子にとって人生の大きな転機と
なりました。

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「大変な手術を乗り越えられたから、これからいろんな事があっても大丈夫だと思う!」
という息子の言葉は本心だと思います。
米田先生に助けていただいた命を大切に、夢に向かって頑張ってくれるはずです。

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米田先生もお忙しいにも関わらず病室に来て下さり、お会いするだけで何故だか私の
方が元気をいただいておりました。今後もたくさんの患者さんや家族の方を元気にして
あげてくださいね。

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お忙しい毎日をお過ごしのことと思いますので、先生もどうぞご自愛ください。
また外来でお会いできるのを、親子共々楽しみにしております。
どうぞ氏家先生、内山先生、楠瀬先生にもよろしくお伝えください。

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ありがとうございました。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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