最終更新日 2019年1月7日
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◾️修正大血管転位症に合併した三尖弁閉鎖不全症の手術
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三尖弁閉鎖不全症(機能的つまり役割のうえでは通常の心臓の僧帽弁閉鎖不全症に相当します)は修正大血管転位症の患者さんには大敵です。
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というのは修正大血管転位症の患者さんの全身へ血液を送るポンプは右心室(解剖学的右室と呼びます)という弱いほうのポンプなので、もともと壊れやすいからです(右図)。
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若い間は比較的保たれていることも多いのですが、40代、50代と年齢が上がるにつれてこの右心室のポンプは疲れが蓄積して弱って行きます。
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そのためこの右室ポンプの入り口にある三尖弁はきれいに閉じなくなり、逆流が発生するのです。
逆流が増えてくると、そうでなくても弱い右室ポンプが負荷のためにいっそう弱って行きます。
こうなると拡張型心筋症と同様の心不全状態となり、ますます三尖弁の逆流が増えるという悪循環に入って、次第にいのちを落とすひとが増えて行きます。
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何としても防ぎたいところです。
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そこで修正大血管転位症の患者さんが高度な三尖弁閉鎖不全症を発生したら、早期の手術が勧められる方向にあります。
右室がいずれ悪化することが予測できるのに、放置して右室を壊してしまうのではなく、前向きに三尖弁を治して右室を守ろうというわけです。
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ただしこの病気の患者さんにはお若い方も多く、なるべく仕事や楽しみの邪魔にならないような手術が理想的です。
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◾️そこで修正大血管転位症にミックスでの三尖弁手術
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こうした観点から、私たちは安全にできる場合にMICSそれもポートアクセスでの三尖弁手術を行っています。
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写真右は修正大血管転位症の三尖弁閉鎖不全症にたいして三尖弁手術をMICSで行った30代女性の術翌月の傷跡の写真です。普通の生活の範囲内では傷跡はほとんど見えず、痛みもありません。これから時間とともにさらにきれいになって行くでしょう。
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通常、MICSによって傷跡は見えにくく、痛みも少なく、仕事復帰も早くなります。胸骨を切らないため退院後まもなくクルマの運転ができます。お若いだけに傷跡が見えにくいというのは喜ばれています。
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こうして心臓手術のストレスを軽減することで、患者さんが前向きに手術を受けられ、右室も守り長期間の安全を守ることができれば素晴らしいことと思います。
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◾️修正大血管転位症での注意点は
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なお通常、僧帽弁や三尖弁の逆流に対しては私たちは100%近いケースで弁形成を行っています。これによって機械弁のときのワーファリンや生体弁の場合の再手術も回避しやすくなり、患者さんへの恩恵は大きくなります。
しかし修正大血管転位症における三尖弁閉鎖不全症の場合は異なります。
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というのはこの三尖弁はもともと全身ポンプの弁ではないため構造上、無理があるのです。いずれ壊れる運命にあることが多く、弁形成して逆流がきれいに消えても長持ちしない恐れが大きいのです。
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そこでこの修正大血管転位症に限っては、前向きに人工弁を使うようにしています。ただし単に人工弁を挿入するだけでは右心室を守りきれない可能性があるため、腱索や乳頭筋は完全に温存しています。
若い患者さんでは機械弁を勧めていますが、ご希望があれば生体弁を考慮しています。もし将来それが壊れた段階でTAVI(カテーテルで入れる折りたたみ生体弁)をもちいたバルブ・イン・バルブという方法で、壊れた生体弁の内側に新たな生体弁を取り付け、また当分の間元気にくらせる、という治療を考えからです。この考えは欧米ではすでに普及する方向にあります。
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こうして病気の特徴をしっかり把握し、手をこまねいて病魔にやられるのではなく、それに先回りしてしっかりと心臓を守る、こうした心臓手術を行っていますが、その中で患者さんの心の傷を小さくするMICS手術は大変有用と考えています。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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