拡張型心筋症にもさまざまな状態や段階があります。
中には回復が期待を下回ることもありますが、多くはある一定の成果を出します。中に劇的と言ってよいほど改善することがあります。
Aさんは40代男性で拡張型心筋症 のため私の外来に来られました。そのとき、すでに左室のちからは正常の3分の1にまで低下し、左室の形がゆがむため僧帽弁までゆがみ、僧帽弁閉鎖不全症を合併しておられました。いわゆる機能性僧帽弁閉鎖不全症とよばれる状態でした。
心不全も高度になり始めていました。つまりいのちの危険が徐々に迫っていたわけです。
十分に検討した結果、Aさんの場合はバチスタ手術などの左室形成術は不向きで、僧帽弁形成術が妥当、そしてその場合、術後にある程度良くなった状態を受けて十分に薬で磨く、という方針を立てました。
拡張型心筋症というだけで世間的には危険性が高いのですが、そこは慣れたチームですので手術はスムースに行き、患者さんはお元気に退院して行かれました。
そ れから外来で入念に薬で心臓を磨くという作業に入りました。近隣の開業医の先生の全面的ご支援もいただき、きめ細かい治療ができました。奥様の全面的な協力も大きく貢献しました。
2年後には手術前とは別人のような心機能にまで改善しました。左室駆出率でいえば、手術前20%程度であったのが2年後には50%台にまで回復したのです。
拡張型心筋症はまだまだこれから治療法が進歩する領域と思います。決してあきらめず、できるところから着実に治していく、これがお勧めできる方針です。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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