Aさんは私が京大病院に勤務していたころ、つまり今から10年以上前に滋賀県から来られた患者さんです。カテーテル治療(PCI)を17回も受け、それでも心不全が改善しないということで来られました。心不全のため在宅酸素療法まで受けておられました。
といってもカテーテルの先生の批判をしているのではなく(昨今はPCIのやり過ぎを戒める空気が強くなりました)、むしろ逆で、粘り強いPCIのおかげでここまで生きることができ、私の外来に来ることができた、とも解釈できます。
さてAさんの心臓はそうした状況でひどく弱っていました。左室は大きく拡張し、駆出率も20%まで低下していました。左室形成術とくにドール手術の良い適応でした。
手術ではドール手術と僧帽弁形成術などを行い、術前の状態とはうってかわってお元気な状態で退院して行かれました。タバコが大好きで、一本でもいいから減らして下さいねとお願いしておきましたが、それ以外は良い状態でその後外来に通院しておられました。在宅酸素も不要になったと聞きました。
現在ならさらに進んだドール手術の改良型と乳頭筋最適化手術(PHO手術)でより心機能の改善を図るところですが、10年前の当時でもお役に立てたことをうれしく思っています。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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