15年あまり前、2例目の左室緻密化障害のオペをハートセンターにて執刀させて戴きました。
Bさんは約20歳の男性で左心室の中に狭窄があり、緻密 化障害のために左室の半分近くが肉柱や繊維でうずまる中に筋肉の突出がありました。
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これらの組織をしっかりと切除したくても僧帽弁を支える乳頭筋の根本さえ左室緻密化障害でスポンジ様になっていたためなかなか思う存分の手術操作ができません。
ひとつひとつ確認しながら、左室を狭くしている異常心筋を切除し、乳頭筋を守りながらその周辺の肉柱を丁寧に切除しました。
これにより心室の中に血液が入りやすくなり、その機能が改善しました。
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術前は軽い仕事でも息切れがあったのですが、術後はそうしたことが起こらなくなりました。仕事にも打ち込んでもらいやすくなりました。
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ただ仕事が忙しく、外来にも次第に来られなくなり、まあ元気で仕事に忙しいのであればまだしも幸いなのですが、心臓を守る薬を止めるということは、今後確実に心機能が悪化し下降線をたどることになるのです。
実際、その後いちど外来に来られたときに心エコーを調べると、それまでほとんどなかった肺高血圧が発症し、左室の拡張機能が低下し始めていることが判明しました。薬を使えばある程度以上はその進行を抑えられるのです。
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Bさん、君は若く将来があるというのに、せっかく左室緻密化障害の心臓を改善したのにまたダメにしてはいけない。忙しくても、時々でもいいから病院へ来て薬を続けて下さい。君だけでなくご家族のためにも体を大切に!
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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