◆ 患者さんの想い出(1):
僧帽弁形成術でもいろんな想い出があります。かつて京大病院で勤務していたころ、近くの総合病院から感染性心内膜炎の20代女性が搬送されて来ました。今から10年以上もまえのことです。
将来妊娠・出産を希望しておられるため絶対弁形成が必要でした。
しかし弁の破壊が強く、全体に壊れているといった、困った状態でした。
前尖も後尖も、それぞれ数か所で壊れ、腱索も複数個所で切れており、しかもまだ感染つまりばい菌がそこについている所見もありました。
感染組織を切除してきれいな組織だけにしてから僧帽弁形成術するのが原則ですが、それでは弁があまり残らなくなるという状況でした。
しかし入念に感染組織を必要最小限切除し、残せる組織は残し、ひとつ一つ再建し、不足するところは自己心膜パッチで補修しました。
僧帽弁形成術の仕上げに使うリングもばい菌に負けないような工夫を凝らしました。
結局弁はきれいに蘇りました。
患者さんも私たちも同じ目標と同じレベルの熱い想い、執念と言っても過言ではないほどの気合をいれて手術した結果です。
ひとりの女性のみならず、そのご家族や人生までを左右する大勝負を任されたこと、光栄なことでした。
冷や汗がいつしかうれし涙になっていたと思います。
僧帽弁形成術の重要さや達成感をあらためて教えてくれた一例でもありました。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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