僧帽弁狭窄症、、患者さんの想い出

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Aさんが初めて私の外来に来られたのはもう10年近く前のことです。僧帽弁狭窄症のため心不全と不整脈が出ていました。

そのころからそろそろ心臓手術をとお勧めしていましたが、まだ症状が軽く、かつAさんが医療関係者で普通以上に手術を恐れておられたこともあり、外来で経過を見ていました。

まもなくAさんは脳梗塞に襲われました。想定された合併症ですので、まえもって予防のお薬を飲んで戴いていたため、後遺症を残さずに治りました。

その後もAさんは外来に通院され、僧帽弁狭窄症が徐々に進行するなかで、オペの決心はつきませんでした。

5年の月日が流れ、Aさんは2度目の脳梗塞に襲われました。この時も、予防薬が効いて、後遺症を残さずに済みました。

さすがにこの時にAさんは心臓手術を受ける決心をされ、まもなく僧帽弁置換術、メイズ手術と三尖弁形成術を受けられました。

現在なら僧帽弁形成術ができたかも知れません。

手術でお元気になられたAさんは、退院のときに、こんなんだったらもっと早くオペを受けたら良かった、と。それはともあれ、5年の遅れを取り戻せて何よりでした。Aさん、おめでとうございます。

僧帽弁狭窄症の患者さんたちにおかれましては、こうしたことも念頭においていただき、今元気だからと、やるべきオペを先延ばしにして脳梗塞などに襲われることのないように、十分考え、相談して頂ければ幸いです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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