Aさんは80代の男性です。三尖弁閉鎖不全症のため大学病院から紹介されて私の外来へ来られました。
以前に除脈のためペースメーカーを入れ、それから上記の三尖弁閉鎖不全症が発生し、肝臓のうっ血のため肝機能障害にいたり、このままでは肝硬変になって命にかかわる状態でした。
ペースメーカーのケーブルは三尖弁を通過して右室に到達するのですが、ときに三尖弁を圧迫し、弁が閉じなくなって逆流(閉鎖不全)が発生するのです。その場合、逆流は通常高度です。この場合の弁形成は難しく、かといって人工弁は良くないため難題と考えられています。そのため大学病院から紹介されたわけです。
私たちは良い方法を持っているため手術を行いました。私たちのルーチン通り、人工心肺を用いて、心臓は動かしたまま、弁をケーブルからはがしてからそのケーブルを弁輪に埋め込み、弁がきれいに作動するのを確認してからリングで弁輪を形成しました。
逆流はほぼ消え、肝臓の腫れも急速に治りました。肝機能障害も徐々に正常化し、患者さんはお元気に退院して行かれました。
日本ペースメーカー友の会には同じような三尖弁閉鎖不全症で困っている仲間がいる、先生ぜひそういう人たちを助けてやって下さいとのことでした。
今後も啓蒙活動を地道に行って、ペースメーカー三尖弁閉鎖不全症は治せる病気であることをお知らせしながら患者さんの治療に努めたく思います。Aさん、また外来で雑談しましょう。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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