ポートアクセスが前向きに安全な場合、、患者さんの想い出

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Aさんは70代女性です。遠方の東北地方からお越し頂きました。これまで僧帽弁手術を3回、他病院で受けられました。

人工弁の付け根が外れて、弁周囲逆流が発生し、そのため血液が壊れ、溶血を起こしていました。そのために貧血が進み、さらに腎臓が弱っていました。

このままではいのちにかかわる事態となるため、心臓手術することにしました。

私たちは再手術の経験も豊富で4回目手術にも実績がありますが、Aさんの場合は心臓や血管が直接胸骨に癒着しているため出血リスクがあること、そしてポートアクセス法がうまく機能する条件があったため同法を選びました。

右胸を小さく開け、そこから左房に到達しました。上行大動脈を遮断しようにも、癒着が強かったため無理をせず、風船を入れてこれで心臓を一時止めました。

僧帽弁(人工弁)は3分の1周ちかくまで外れていたため、弁置換手術をやり直しました。このとき、同じような問題が起こりにくいように、十分な補強材をもちいて弁を縫い付けました。

術後経過は順調で、まもなくお元気に退院されました。

ポートアクセス法に代表されるミックス手術は通常はよりきれいな創・見えにくい創、あるいは早い仕事復帰や軽い痛みを目的として行いますが、このAさんのように、純然たる安全向上の目的で行うこともあるのです。

どれが良いとか悪いとかを決めつけるのではなく、さまざまな方法をもち、その患者さんにベストの選択をする、これが一番です。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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