想い出のある患者さんは多数ありますが、そのひとり、Aさんは若いころから弁膜症を患われ、僧帽弁置換術を過去に2回受け、3度目の手術のために当時私が勤務していた京大病院へ来られました。
比較的大きなオペでしたが、術後経過良好で間もなく元気に退院されました。
それから数年経って、弁の支えの部分が裂けたため、当時私が勤務していた豊橋ハートセンターに来られました。状態が悪く決死の覚悟で、しかしいのちを賭けた闘いのために来院して下さいました。2008年ごろのことです。
弁膜症 4回目の心臓手術もうまく行き、まもなく元気に退院されました。
その後は心臓は良くても鼻血や下肢の浮腫などの全身や血管の弱さに悩まされることが多く、その都度工夫し我慢と努力で切り抜けられました。
徐々に体力が低下され、数年後の昨年(2013年)、ご自宅で静かに息を引き取られました。その前日まではお元気だったそうです。永い間、本当にご苦労様でした。しかしその間、さまざまな楽しみを持ち、Aさんらしい知的な生活を送られたこと、うれしく思います。私はAさんのブログをいつも拝見し刺激を戴いていました。
もし今、同じ状態の弁膜症の患者さんが来られたら、さらにもう一段優れた手術治療をとも思い、自分やチームを磨いています。それがAさんへの弔いと思うのです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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