79 歳女性でややご高齢のため脳と脊髄保護に特に注意して手術法を考えました。
矢印は弓部大動脈。
写真の左側が頭側です。
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血液が貯まっているところから奥が下行大動脈につながります。
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症例1-3 弓部大動脈全置換を開始。まず第3枝(矢印A)を人工血管(矢印B)とつないでいます。
テレスコープ式プロレーン連続縫合で一気に縫いあげます。
この吻合は止血や確認も容易です。
なお吻合部はプラークのない、きれいな部位をもとめて末梢側に進み、そこで吻合します。
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血管そのものはいじらず、もしも血管内にプラークなどのゴミがあっても逆行性脳灌流を適宜使用して洗い流し、脳梗塞等を予防します。
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逆行性脳灌流ついで巡行性灌流をもちいてエア抜きとゴミ取りを行います。
これで脳や上半身は循環再開できます。
20℃の低体温で20分台の脳虚血ですので余裕があり、術後の覚醒は良好です。
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症例1-6 下行大動脈にもう一本の人工血管をつなぎます(矢印)。
ステップワイズ法 stepwise法を用いることで、深い場所ですが結構良く見えます。
吻合部全体を常に見ながら縫えるのは便利です。
またこの方法はステントグラフトを用いた追加治療が必要な時にも便利です。
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症例1-7 これら2本の人工血管をつないで通常の体外循環を再開し、
心臓側の上行大動脈(矢印)とつないで弓部大動脈全置換術の完成です。
ここでもテレスコープ(望遠鏡)式の連続縫合を使います。
そのあと補強を行い止血します。十分な止血が有用です。
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症例1-8 上行大動脈から弓部大動脈まで完全に人工血管で置き換えられ、瘤破裂の心配は消えました。
近年はこの方法をベースに、より体温を上げて、選択的脳灌流(脳を含む上半身に別回路から血液を送ります)が安全なケースではこれを活用し、スピードアップと低侵襲化(手術が短時間になるため患者さんへの体への負担が軽くなります)を図っています。
また針穴出血が少ない新型人工血管を使うことで今後一層出血が減り安全性が高まるものと期待されます
さまざまな有用な方法が使えるようになり、それらの適切な選択や併用などが重要になると思います。
これらにより弓部大動脈全置換術の成功率は95%レベルに達し、すでに安全な手術に入りつつあります。
近年急速に進歩をとげたステントグラフトを併用する、いわゆるハイブリッド手術も活躍を始めています。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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