患者さんは70歳女性。サルコイドーシスの診断確定から17年後にサルコイドーシス心筋症・心不全のため手術となりました。
サルコイドーシスの初発病巣は肺と眼(ぶどう膜)でした。
左室駆出率27%、僧帽弁閉鎖不全症MR 4度、BNP 912の術前状態でした。かなり強い心不全の状態です。
1.体外循環下に心臓を頭側へ脱転し、左室後壁を切開しました。
心拍動下に行おうとしましたが、大動脈弁の逆流が強いため方針を変更し、心停止下に行うことにしました。
サルコイド心でやられた左室壁は皮製品のような硬さがあります。.
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2.後壁と後壁中隔を形成するパッチを縫着したところです。(セーブ手術)
パッチの手前のスペース分だけ左室が小さくなります。
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心臓はまだ半ば脱転された位置にあります
(写真で上が頭側、下がお腹側)。
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僧帽弁輪形成術をリングを用いて行っているところです。
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大動脈弁形成術を行っているところです。
3つの交連部の形成で大動脈弁尖が中心部へせり出すように形成し、中心逆流は軽減しました。
これでもしもIABP(大動脈バルーンパンプ)が必要な状況になっても十分に活用できます。
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6.術前後の左室造影像。
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左:術前の拡張末期像と収縮末期像、右:術後の拡張末期像と収縮末期像です
セーブ手術術後は左室が細長く縮小し、動きも改善し、さらに僧帽弁閉鎖不全症MRもほぼ消失しました。
カテーテルで肺動脈圧は術前の55/17から術後は17/8まで改善、左室駆出率も術前の27%から術後は34%へと上昇しました。
患者さんはその後、遠隔期に、弁の器質変化が進行しMRを再発したため生体弁で弁置換MVRし、以後また元気に暮らしておられます。
サルコイドーシスそのものの丁寧なフォローも重要と考えています。
サルコイド心の左室はしばしば局在性があり、残存心機能が良好なこともあるため、早期の診断と精密検討が患者さんの予後改善に役立ちます。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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