事例: 大人のPDA(動脈管開存症)

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患者さんは54歳男性。若いころから動脈管開存症PDAの診断を受けていましたが、最近運動時の呼吸困難感や動悸を訴えるようになり、手術の決心をされました。

心臓カテーテルや心エコー・ドップラー検査などで多量の血液が大動脈からPDAを通って肺動脈に流れ込み、心臓に大きな負担がかかっていることが判明しました。

Mpapda成人のPDAはこどものPDAと違って、脆く弱くしばしば石灰化などの変化をきたしているためこどものPDAの手術のように外から糸をかけてしばる、という操作は危険です。

そこで体外循環を用いて、肺動脈の内側からアプローチして肺動脈ごしに閉鎖するのが安全です。

手術では体外循環(人工心肺)のもとで体温を26-28℃程度まで下げ、ごく短時間の軽度低灌流のもと、主肺動脈を切開し PDAを肺動脈側から確認しました。

PDAの肺動脈への開口部は直径6mmあり、多量の血液が大動脈から肺動脈へと流れ込む所見でした。

Pda工夫して体外循環の灌流量をほとんど変えずにPDAを直接閉鎖しました。大動脈から肺動脈への漏れがほとんど無いことを確認して肺動脈の切開部を閉じました。

写真左はすでにPDAを閉鎖したところで、ピンセットの先付近にある布きれのようなものが糸をささえるフェルトで、これらでPDAを抑え込む形で閉鎖したわけです。

大動脈遮断時間は22分、体外循環時間は78分で、スムースに手術を終えました。

Pda_2写真左はPDAを閉鎖完了し、主肺動脈も閉じたあとの姿です。手術前に手でも触れたPDA血流ジェットはもう触れません。治った証拠です。

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出血も少なく心臓や全身の状態も良好なため、手術当日、余裕をもって抜管(人工呼吸を外れて患者さんご自身の力で普通に呼吸する)しました。

動脈管開存症PDAで手術を決心つかないまま心不全や不整脈が出てきて不安な日々を送っておられるかたは是非ご相談ください。

迷ってそのままの状態でいるほうが危険なことが多くあります。最近もそういう患者さんがおられました。

危険かも知れない状態で迷い、悩むよりも、早く診察を受け、きちんと調べて方針を立てることが安全・安心につながります。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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