事例:典型的なオフポンプバイパス手術

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患者さんは 67歳男性、冠動脈3枝病変左主幹部病変のためオフポンプバイパス手術(オフポンプCABG手術、OPCAB)のため来院されました。

心臓病だけでなく糖尿病もお持ちで、しかも右椎骨動脈閉塞、右外頸動脈狭窄、両側内頸動脈プラークがあり脳梗塞になりやすい懸念があり、オフポンプバイパスのメリットが一層活かせるケースです

Ritalad全身麻酔下に血行動態は安定していました。

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頸動脈領域の病変を考慮して通常以上に血圧安定を意識しました。

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Ritadiagoグラフトを準備したのち、まず心臓を軽く脱転し右内胸動脈 RITAを左前下降枝 LADに側側吻合しました(写真上左)。

これで以後のオフポンプバイパス操作が大変やりやすくなります。

さらにこのRITAを第一対角枝D1にU字グラフトの形で端側吻合しました(写真左)。

通常はSカーブを描くなどのレイアウトを取りますが、この患者さんの狭窄部の位置特徴からこのようにしました。

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Litaom1_2ドップラーにてそれぞれの吻合で良好なフローパタンを確認しました。

フローパタンが良好ならそのグラフトの開存率は極めて高く、良好な結果となります。

  ここで心臓を右側へ脱転し、左内胸動脈 LITAを第一鈍縁枝OM1に側側吻合しました(写真左)。

心臓を脱転しても血圧は低下せず安心な手術ができます。                     .

Litaom2

さらにこのLITAを第二鈍縁枝OM2にU字グラフトの形で端側吻合しました(写真下左)。

 

ドップラーにて良好なフローパタンを確認しました。

 

 

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通常この部位のグラフトレイアウトもSカーブのITAで側側吻合するのですが、この患者さんの場合は最適吻合部がたまたまOM1でやや遠位部に位置したためスムースな血流を重視してU字グラフトとしました。

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Svg  ここで大伏在静脈SVGの上行大動脈への中枢吻合を自動吻合器にて行いました(写真左)。

静脈グラフトよりも動脈グラフトが良いと信じられた時代もありましたが、最近はやり方や部位や状況によっては静脈グラフトは一部の動脈グラフト(たとえばとう骨動脈や胃大網動脈)に匹敵する長期成績がでており、静脈グラフトには血流競合に負けにくい特長もあり、しかも患者さんの体への負担が少ないため、私たちは臨機応変に静脈グラフトを患者さんの役に立つ形で活用しています。

Svg4pd心臓を頭側へ脱転し、このSVGを右冠動脈4PD枝に端側吻合し(写真左)、すべての吻合操作を完了しました。

ドップラーにてこのSVGの良好なフローパタンを確認しました。

オフポンプバイパス手術操作中、血行動態は一貫して安定していました。経食エコーにて良好な心機能と弁機能を確認しました。

術後経過は良好で、出血少なく血行動態良好で、神経学的異常等もなく、翌朝抜管し2週間程で元気に退院されました。MDCTで術後検査を 手術のあと、バイパスはいずれもきれいに開存していました 行い、すべてのバイパスグラフトは開存していました。

こうした心臓(冠動脈)と他臓器(頚動脈など)が同時にやられた状態の患者さんでは複数の病変と同時に向き合う必要があります。心臓が良くならないとその他の臓器の治療が進まないので、私たちがまず先陣を切るようにしています。

もちろん他臓器が断然重症のときにはそちらの治療を心臓の観点から支援し、他臓器が軽快してから心臓の手術ということもありますが。こうした科を超えた、さらには病院や地域を超えたチーム医療も患者さんには福音となり有意義と思います。

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オフポンプバイパス手術について(解説)

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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