最終更新日 2020年3月11日
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◾️冠動脈瘻とは?
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冠動脈瘻 とは冠動脈に異常な血管が発生し、それを介して肺動脈や右房など圧の低いところへつながり、そこへ血液が無用に流れ込む病気です。
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◾️どのようにして出来る?
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胎生期つまりお母さんのお腹の中にいる頃に心臓の筋肉に血液を供給していた海綿状組織が残り、その後出来上がる冠動脈と連結するとこの冠動脈瘻になるのです。なので生まれた時から発生していることが多いのですが、異常血管や冠動脈が二次的変化を来たし大きくなるのは青年期以後になることもあります。その3割に冠動脈瘤を合併しています。
冠動脈造影 検査を受けた患者さんの0.2%に見つかる比較的稀な病気です。
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◾️病気が進むと?
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冠動脈瘻を通った(シャントと呼びます)血液の量が多ければ心不全・心筋虚血(狭心症とよく似た状態)の症状が現れます。
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右図は正常の冠動脈と冠静脈です。この冠動脈がこぶのように膨れるのが冠動脈瘤で、冠動脈の枝が右房や肺動脈その他に注いで太くなるのが冠動脈瘻です。
左下図は冠動脈瘻の一例です。向かって左側の右冠動脈と、向かって右側にある左冠動脈の両方から異常血管が上方の肺動脈へ向けて流れています。
血液が漏れて空回りすることも有害なのですが、本来冠動脈を流れるべき血液が取られるために心筋が酸欠になることも有害なのです。
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冠動脈瘻ではまた感染性心内膜炎も起こりやすいとされています。
心不全やシャント量が多ければ、あるいは瘤破裂などが起こりそうな場合は外科手術の適応となります(手術事例 冠動脈瘤)
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◾️どのようにして治す?
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カテーテルでコイルなどを瘻に詰めて閉鎖することができます。それが難しい場合や危険な時には心臓外科による手術が行われます。手術では瘻を糸などで閉鎖します。
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私たちはできるだけ冠動脈瘻・冠動脈瘤の入口と出口を閉じるだけでなく、瘤全体を閉鎖してシャントを解消するようにしています。
というのはしばしば入口・出口以外に動脈や静脈と交通していることがあり、これを残すと不完全治療になりかねないからです。
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また可能な限り体外循環を使わないオフポンプバイパスの方法で手術しています。これによって手術の安全性が高まり、回復もはやくなります。ひとつの低侵襲手術ですね。
さらにこれを傷跡の小さいMICSで行うことが増えました。こちらをご覧ください。
こうすることで術後の痛みが軽くなり、仕事復帰も早くなります。これがもう一つの低侵襲手術と呼ばれるゆえんです。
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◾️さらに完全な冠動脈瘻の手術を目指して
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そして15MHzの高速エコーをもちいて、血液がどこにももれていないことを確認してから手術を終えるようにしています。術中にエコーを心臓の表面に直接あてて、目に見えない心臓の奥まで調べて血液の漏れるルートを残らずに治すのです。これによって冠動脈瘻の再発が予防できるわけです。
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こうした技術は冠動脈バイパス手術を改良するなかで培い、10年以上前から世界に発信しており(文献129をご参照)、この技術の蓄積が冠動脈ろうでも役立つのです。いわば第2の眼を加えて心臓手術するわけです。
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2017年末に心臓血管外科のメジャージャーナルである Annals of Thoracic Surgeryに私たちの新術式が掲載されました。ご一読ください。(英語論文267をご参照)。右図はそこで掲載された図です。
冠動脈瘻はしっかり直せば元気に完治出来る病気です。
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メモ1: 近年、こうした血液を漏らす悪い血管をカテーテル技術でコイルなどをもちいて閉塞させる技術が進歩しつつあります。
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冠動脈瘻の軽症例では役立つこともあるでしょう。逆にケースバイケースでカテーテルやコイルが薄くなった冠動脈を破ることもあり注意が必要です。
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私たちは常に内科やコメディカルと一緒にハートチームとして相談し、ベスト治療を選ぶようにしています。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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