大動脈弁の生体弁にはステントと言われる台座に弁を縫いつけたステント弁と、ステントという台座がない弁(ステントレス弁)があります(弁膜症 事例9)。
ステントレス弁の方が弁としては高性能で、とくにもとの弁が小さい時に威力を発揮します。
これは台座のサイズ分だけ弁の開き方が大きくなるおかげです。
最近の北米での検討でもステントレス弁の方が心臓の回復が良く、術後長期の成績も良いようです。
ただしステント弁(写真右)も進化し、その差は縮まっているという報告も増えています。
私共の経験でもステントレス弁はステント弁より1ないし2サイズ大きい弁が入り、心臓の調子も良好です。
弁の寿命はステント弁よりやや良さそうな印象ですがまだ明らかではありません。
手術はステントレス弁の方が難しく、ステント弁なら眼をつぶってでもできるような熟練した外科医にのみ、ステントレス弁が安全確実に手術できると思います。
私はトロントでステントレス弁が開発された頃(1987年)からの経験蓄積があり、普通の弁と大差ないスピードで手術ができるため、患者さんへの負担は軽く良好な成績を得ています(累計30例以上で死亡や大きな問題なし)。
ステントレス弁にはそれ以外にも長所があります。
たとえば大動脈基部拡張症(大動脈の根っこの部分が拡張)で大動脈弁閉鎖不全症になっているケースで、60歳以上の年齢の患者さんなら、このステントレス弁を入れ子のように大動脈の中へ入れれば比較的簡単・安全に心臓手術できます。
ミニルート法またはインクルージョン法とも言います。
ベントール手術という大動脈基部置換術と同じことを、より低侵襲でできる方法とも言えるでしょう。
詳しくは⑥大動脈基部の病気のページをご参照ください。
この方法によって、出血が回避しやすく、感染などにも強く、侵襲(患者さんの体への負担)は低くなります。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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