最終更新日 2019年1月5日
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◾️動脈管開存症(PDA)とは?
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動脈管開存症は胎児のころに活躍していた血管(普通は詰まって索状になります)が生まれてからも残ることで起こる病気です。
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動脈管開存症が大きければ心不全や肺高血圧などの危険な状態になりやすいため手術を行いますが比較的小さい動脈管でもそのままでは感染性心内膜炎になるリスクがあるため手術して治すことが普通です。
多くはこどもの間に手術します。
動脈管開存症では圧の高い大動脈から圧の低い肺動脈にジェットの形で血液が漏れます。そのジェットの物陰、よどみのところにばい菌が繁殖しやすいと考えられており、虫歯の抜歯やけがのあとで感染性心内膜炎になりやすいことが知られています。
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◾️動脈管開存症の治療は?
動脈管開存症の治療はカテーテルを用いて内側からコイルを詰めて管を閉鎖する治療が進歩しつつありますが、管のサイズや形によってはうまく行かないことや危険なこともあり、その場合は外科手術が必要となります。
手術も子供の成長を考慮してなるべく小さな傷で治せるような工夫(小切開、クリップ、胸腔鏡など)がなされています。
肺高血圧が高度になるとアイゼンメンガー症候群と言われる状態になります。つまり肺の血管が壊れて硬くなり、もとにはもどらなくなってしまうのです。そうなるまでに安全に外科手術して治してしまうことが有利です。
また動脈管開存症(PDA)は他の心臓病に合併することがあります。心室中隔欠損症(VSD)などがそのひとつです。あまり重症になるまでにオペすることが望ましいです。(心臓手術事例)
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◾️とくに成人期以後の手術は
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動脈管とはもともと消滅していく運命にある臓器ですので、年々弱くなって行きます。
患者さんの年齢が30歳を超えますと動脈管に石灰化が生じ、50歳を超えると組織そのものがより弱くなるため、単に動脈管を糸などでしばると破れることがあります。
破れれば命の危険があります。
それよりも確実に、体外循環・低体温を用いて動脈管開存症の穴(入口)を閉じるのが安全上勧められます。
しかし従来型の体外循環で全身を冷却し、循環を止めて(低体温循環停止と呼びます)動脈管を閉鎖するのは時間もかかり侵襲が大きく患者さんに有利とは言えません。
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◾️そこで工夫した動脈管開存症の手術
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私たちは工夫を重ねて安全に、比較的軽い低体温で、短時間の体外循環を使い、少ない侵襲(体への負担)で手術するように心掛けています。おかげで出血も少なく無輸血率も上がります。術後早い時期に歩き、元気になるのです。
この方法は今後学会などでも発表の予定です。
それらによって安全性がさらに増すとともに早期の回復と社会復帰が進みます。 (手術事例・大人のPDA)
さらにこの方法では、比較的傷跡が小さく見えにくいミックス(小切開低侵襲手術)も可能です。
動脈管開存症では若い患者さんも多いため、安全を確保しつつなるべくミックス手術でこの手術治療を行うようにしています。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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