ステントグラフト(略称EVAR、TEVAR)は比較的あたらしい治療法ですが、近年さまざまな展開があります。
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あるい は危険性が高すぎる末期重症患者さんとくに胸腹部大動脈瘤 なかでも破裂性のものに対して、
外科手術とステントグラフ ト(EVAR)を組み合わせたハイブリッド治療 を開始しました。前任地にて2004年から開始しています。
当時はあまりにも斬新すぎて学会で発表しても皆さん唖然としておられ、質問も反論さえもでなかったのを覚えています。
認められなくても良い、患者さんが元気になればそれでよいと開き直っていました。
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京大病院時代には6人の絶体絶命、超重症の患者さんをいずれも生還させています。
今後の強力な救命手段になるで しょう(手術事例 3)。
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またハイブリッド治療は胸部大動脈瘤でも活躍することが増え、
たとえば上記のようにエレファントトランクの安定化に活用することもありますし、
胸部大動脈を全部取り替える必要がある患者さんでは体の前からアプ ローチし、
上行大動脈と弓部大動脈を人工血管で治し、
下行大動脈以下はステントグラフト(TEVAR)で治すことで
手術侵襲つまり体への負担を軽くし、安全性を高めることができます。
左図は大動脈基部拡張に対してデービッド手術(自己弁温存式基部再建)を施行したときに、併せて弓部大動脈の3本の枝にバイパスをつけた(デブランチと呼びます)ものです。
マルファン症候群の患者さんなどにこうした方法を用いることで、将来弓部大動脈が悪くなっても簡単にステントグラフト(TEVAR)が追加でき、胸の正中切開が不要となるのです。患者さんのリスクや苦痛を減らし、精神的ストレスを減らすのに役立っています。
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将来のステントグラフトは右図のような形で追加でき、それによって弓部大動脈あるいはそれ以遠の大動脈も守りやすくなります。
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このようにハイブリッド治療では外科手術とステントグラフトの特長を活かすようにしています。
弓部大動脈と下行大動脈さらに胸腹部大動脈、腹部大動脈との間にも同様の工夫ができるようになりました。
何度も手術したり、2つ3つ分の大きな手術をするといくらうまくやっても死亡率が多少とも上がります。
あるいは死亡しなくても、脊髄マヒなどの合併症が起こることもあります。
そうしたことをできるだけ避けるため、ハイブリッド治療を進化させているのです。
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ステントグラフト(EVAR)を活用したハイブリッド治療はハートチーム時代にふさわしい優れた方法です。
うまく活用すれば患者さんにとってはメリットが多く、 喜ばれています。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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