心臓手術―特殊な臓器、特別な配慮と努力が患者さんのために必要【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月1日

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◾️心臓手術、他臓器の手術との共通点は

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心臓手術の分野も他分野たとえば胃腸 209142436や肺や脳の外科と共通することが多くあります。

これから治す臓器に何か良いことができるからこそ、意義や利点が患者さんに対してあるわけですが、同時にいくら良いことをすると言っても、そのために皮膚を切ったり、薬で寝かせたり、多少とも出血させたりとマイナス点も多くあります。

これはどの臓器の場合にも共通しています。

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◾️心臓手術、他臓器の手術と違う点は

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以下が挙げられます。これがすべてではありませんが。

 

 1.心臓はジョギングhealth_0098他の多くの臓器のように一時お休みが成り立たないこと。

 短期間でも休んでしまうと脳その他の臓器に致命的な 打撃を与えかねないこと。

そのため心臓手術で一時心停止するときは人工心肺(体外循環とも言います)を使う必要がある

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2.その人工心肺や出血しやすさのため、侵襲(しんしゅう、つまり体への負担)が大きい こと。

とくにこれを使うためには血液が固まらないようにする薬(ヘパリン)を使うため、他の外科より厳重な出血対策が必要となる

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3.他の多くの臓器や組織のように、切除だけで済まないケースが多く、ほとんどの場合、再建つまり作り直すことが必要

1.とあわせて、作り直せなければ即死亡につながることが多い心臓外科では短時間に確実に心臓を再建することが必須です

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4.1.のため時間が限られる場合が多く、確実さとスピードの 両方が求められる

それらがなければ破綻を来し死亡リスクが高くなる

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こうした特徴から、心臓血管手術では確実さとスピードを持つことが必須となります。

そのために熟練や日々の考察・勉強・準備・基本練習などが求められます。半端な腕では患者さんに迷惑となるわけです。

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◾️心臓手術で数(熟練度)が大切なわけ

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「数」が心臓血管外科で特に強調されるのは上記のためです。

経験した症例数が少なければ、手の動きもそれを支える頭の動きも鈍くなりがちで、さらに1000回に1回という稀な問題に出くわしたときに、とっさの解決が図りにくくなります。

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心臓血管外科を立派にやるためには質と量の両方が必要ですただ数さえこなせれば良いというのではないのですが、質を伴った数(量)が極めて大切というのが世界の常識です。

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欧米や豪州はもちろん、中国・インド・台湾・韓国・タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシアはじめアジアのほとんどの国々でもこの常識はすでに当然のことになっており、欧米式の医療制度(一病院あたり年間1000例以上の心臓手術をたかだか10名以下の医師・修練医とあとはコメディカルで行う)や教育研修制度が根付いています。

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◾️心臓手術の「数」、日本の課題は

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残念ながら日本では Illust193大学を中心にまだまだその世界の常識がわからない方が多く、わかる人たちだけががんばるという構図が進んでいます。

また病院によっては「数」は多くても、外科医の数も多く、一人当たりの「数」が少ない、という問題もあります。

ハートセンターなどの専門施設がその突破口を開けた感がありますが、同時に心臓以外が弱い(たとえば胃腸などの消化器や脳神経など)という課題も見えて来ました。民間病院とくに総合病院的な良さや救急病院の足腰をもつ施設はこの世界の常識を真摯に追求しやすい環境があり、この国の循環器医療をもっと良くするという気概をもって日夜努力しています。

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◾️心臓手術、患者さんの視点から

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また患者さんの視点からは、上記の1.2.のため、一時的に体力や臓器の力さえしばし術前より悪化することがよくあります。

ca010a-sそこを乗り切ったあとは心機能が良くなったのを受けて、全身の体力なども改善していく場合が多いです。

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そのため、心臓手術では患者さんにある程度の体力が残っている状態が必要です。

体がぼろぼろになるまでに、つまりまだある程度お元気なうちにできれば治しましょうというのはそのためです。

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実際、超重症の患者さんの場合、心機能はかなり良くなったのに全身の体力が持たずに結局涙を飲んだつらい思い出が何度もあります。

全身の状態が悪い患者さんはオペしなければ良いという「安全管理」の考えが最近世上で増えていますが、それは助かるかも知れない患者さんを単に見捨てているだけともいえるため単純には賛同できません。

真の安全管理は患者をいかにして守るかというところから生まれるものと思います。

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Ilm09_al07018-s bもちろん考える時間もなく、急に危篤状態になるタイプの病気では患者さんも悪くなるまでに病院へ行こうというわけは行きませんが、

慢性の心臓病ではある程度体力があるうちに心臓手術を乗り切るという考え方はしばしば患者さんを救います。

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◾️心臓手術、医師と患者さんのコミュニケーションが大切なわけ

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それもあってそうした理解と患者ー医療者の間の緊密なコミュニケーションが大切なわけです(要するにどしどし相談!です)。できれば聞きたいことを前もって箇条書きにでもメモしておき、どんどん質問頂ければお互いに役立ちます。

オペのあと病気の悪循環が断ち切れた患者さんはずいぶんお元気になられ、もとの年齢や病気の内容にもよりますが、長年お元気に暮らされる方が多いです。

つまり頑張りがいのあるケースが多くあるわけです。

IMG_0754b .

◾️心臓手術、最近の流れは

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さらに、心臓手術を患者さんにとって、よりやさしいものにしようとする努力、いわゆる低侵襲手術、ミックス手術(MICS)ポートアクセスなどが進歩を続けています。

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左写真はその目立たない傷跡の一例です。痛みも少なく仕事復帰やクルマ運転再開も早いのです。

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慣れた手で慎重に手術すれば従来の大きな傷跡の手術と安全性でも遜色なくなりました。

これからの展開にご期待ください。

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◆参考ページ

心臓手術とはどういうもの?

これからの方向

心臓外科の名医とは

さあ手術と言われたら?!

安全に必要な症例数は?

病院の立派さと心臓外科の立派さは別?

対象となる病気は?

医師の選び方

私のお勧めは?

術後の社会復帰について 

美容について

必要な検査

術前のオリエンテーション

米田正始が考案した心臓手術は

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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