患者さんは30台後半の男性。
健診で心室中隔欠損症VSD と大動脈弁閉鎖不全症を指摘されハートセンターへ来院されました。
心室中隔欠損症は I 型と呼ばれる心室中隔の高い部位に発生したもので、
その欠損(穴)に大動脈弁が落ち込んで次第に大動脈弁閉鎖不全症が発生してきていたため手術になりました。
体外循環・大動脈遮断下に主肺動脈を切開し、
肺動脈弁ごしに心室中隔欠損症にアプローチしました(写真左)。
一見心室中隔欠 損症の穴は小さくなっているように見えましたが、
実際には大動脈弁が徐々に壊れ始めているという所見でした
(写真左と右)。
そこで穴の周囲の筋肉組織や肺動脈弁の付け根のしっかりした組織を活用して糸をかけ、
ゴアテックスのパッチを縫いつけ、穴を閉じるとともに、
実際手術前には心エコーにて大動脈弁の一部が少し穴に落ち込み、
軽 い大動脈弁閉鎖不全症が発生していたのが見えていました。
それらが手術の後には治っていました。
もし必要なら大動脈弁の形成手術も準備してはいましたが、そうするまでもなく、きれいに治りました。
手術後、心室中隔欠損症は消え、大動脈弁も肺動脈弁も正常でした。
このタイプの心室中隔欠損症は時間とともに大動脈弁の閉鎖不全(逆流)という新たな病気が発生してくるため、通常はこどもの間に手術することが多いのですが、何らかの理由でその時期を逸し、大人になって手術を受けるケースが現在もちょくちょくあります。
健診などで心雑音を指摘されたら一度は心臓専門医に念のための診察を受けられるのが安全上、勧められます。
大動脈弁の破壊が高度になりますと人工弁が必要となり、その場合はワーファリンを一生飲む必要が生じるなどのリスクが出てきます。
やはり予防や早期治療が有利です。
なお当時は普通の創で手術しましたが、現在はミックス法にて約10cmの小さい創で手術することが多くなりました。患者さんの心の傷もより小さくなればと思います。
心臓手術のお問い合わせはこちらへどうぞ
患者さんからのお便りのページへ
心室中隔欠損症のページにもどる
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。