事例: ハイリスク例に対するMIDCAB(ミッドキャブ)手術

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患者さんは82歳男性。

20年前にCABG(3本バイパス)を受けられましたが、そのグラフトが閉塞し、

その後2回のカテーテル治療(PCI)でも改善せず、

4か月前から心不全症状著明(NYHA IV度)となりハートセンターへ来院されました。

 

来院時左室駆出率は41%(正常は約60%)で僧帽弁と大動脈弁に中等度の閉鎖不全がありました。

また慢性閉そく性肺障害COPD(一秒率63%)と腹部大動脈瘤(直径50mm)もありました。

 

B体力の余裕が少ない患者さんのため、

できるだけ低侵襲(体への影響が少ないことです)なMIDCAB(つまり左小開胸オフポンプバイパス手術)でバイパス手術をすることにしました。

 

 

再手術で視野が悪いため、MIDCABよりは大きめの皮膚切開を行いました。

心膜を切開し、前回の静脈グラフト(対角枝と前下降枝へつながる)を見つけました。

その周囲を剥離しました(写真左)。Litab

ここで左内胸動脈を剥離しました(写真右)。

 

古い静脈グラフトをたどって左前下降枝をみつけ、露出しました。

この静脈グラフトを切開しましたが、残念ながら内腔はほとんどありませんでした。

さらに左前下降枝も切開しましたが、すでに血管としては使えない状態でした。

Litasvgd1b 

 

そこで静脈グラフトを対角枝の吻合部付近で切開したところ、ここで血流が多量に見られたため、左内胸動脈を吻合しました

(写真左、吻合中)。

良好なフローパタンを確認して手術を終えました

(写真右下)。

術後経過は順調で胸痛も消失し、心不全も改善して運動能力も回復、10日後退院されました。B_2 

 

こうした患者さんつまり昔バイパス手術を受け、その後バイパスが閉塞し心機能が低下し、肺も悪く、高齢といった方は最近増加しています。

この方も元の病院では心臓手術はリスクが高くできないと言われていました。

こうした方を安全に、かつ必要最小限の治療を行うのもこれからの一つの考えと思います。

多少共通したハイリスクの患者さん(エホバの証人で再手術)の記事はこちらをご覧ください。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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