お便り14 コレステロール塞栓の患者さん

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Bara_3患者さんは50代後半の男性。

心筋梗塞後の僧帽弁の逆流(虚血性僧帽弁閉鎖不全症と言います)と冠動脈狭窄(狭心症)のため他病院で心カテーテル治療(PCI)を受けられました。

 

その際にカテーテルが通過する大動脈のコレステロール片が外れて足の血管を閉塞させ(コレステロール塞栓)、

足の一部が腐り、激痛が取れず、しかも心不全が発生して、

もう永くは生きられないだろうと言われハートセンターへ来られました。

 

このコレステロール塞栓は、

さまざまな問題を足だけでなく全身に起こすため命にかかわる危険な状態で、しかも心臓は衰弱しており、

確かに難しい状態でしたが、患者さんと相談の上、このまま死を待つよりは頑張ろうということで治療を開始しました。

(治療内容の詳細は手術事例のページをご参照下さい)

 

Yakkyoku_yakuzaishiまず薬で下肢と全身をできるだけ安定させておいて、そこで心臓をバイパス手術僧帽弁形成術で治し、

体力の余裕が少しできたところで下肢の再生治療をトライしました。

再生治療は当院ではまだ準備中のため交流ある大学に依頼しましたが、

結局腐った組織を切ることで安定しました。

 

その後リハビリも進み、ずいぶんお元気になられ、共に喜び合いました。

その間、私たちを信じて痛みと苦しさに耐えて治療に協力して下さったことを、医師として感謝しています。

以下はそのコレステロール塞栓の患者さんからのお手紙です。

 

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米田正始先生

 

私が足の異変に気がついたのは、夏の暑い8月初旬の事です。

最初は、少し足が痛いなと思うくらいで、あまり気にしていませんでした。

そのうち靴下が履けず、靴が履けなくなり、

病院での検査結果でコレステロール寒栓閉鎖症と診断されたのは、8月下旬でした。

 

9月に入り足の小指、親指が紫色に変色し始め、友人の葬儀の時は、靴も履けずお手伝いも出来ない状態でした。

毎日不安が広がっていきました。

治療法がなく、最終的には足を切断するという最悪の結果になる事があると言われ、絶望感に襲われる日々でした。

 

ある日、運転中に激痛が足に走り、追突事故を起こしてしまいました。

これではいけないと思い、インターネットで病院探しを始めて、ハートセンターの米田先生の存在を知りました。

そして、わらにも縋る思いで紹介状もなく飛び込みで、先生の診察を受けました。

 

先生は温かく私を迎え入れて下さり、心臓と足の再生治療の説明を受け、私はやっと不安がなくなり前向きに病気に立ち向かう事ができるようになりました。

そしてハートセンターでの入院生活が始まり心臓、足の再生治療がスタートしました。

 

しかし足の痛みはなかなか良くならず、苦しい日々が続き、11月上旬には、悪くなっている心臓のバイパス手術を受けました。

心臓の方は順調に良くなっていると言われましたが、足の痛みは消えず、11月下旬には食事も出来ずパニック状態になりました。

 

その際には一時退院させて頂き、2日間家族と共に過ごしやっと普通の入院生活に戻り、

12月にはハートセンターを退院することが出来ました。

 

正直な気持ち、この病院に来た時は半身半疑でしたが、

先生が毎日病室に来て励まして下さり、

又夜になると足が特に痛くなり、毎晩看護師さんを呼んではの繰り返しでしたが、

嫌な顔もせず一生懸命尽くして下さり深く感謝しております。

 

病気が発病して6ヶ月近く、

長い闘病生活の間には、自分の病気、友人の不幸、友人の娘さんの不幸と続き、なぜ自分の周りに嫌な事が起こるのかと絶望感に陥ることがありましたが、

米田先生、北村先生、深谷先生、看護師さん達始め家族も含めた周りの人達に励まされ、

何とか立ち直る事ができ、本当にありがたく感謝の一言です。

 

最終的には、足は少し不自由に成りましたが、

現在は元気になり歩くことも出来、仕事が出来るようになり有難く思っております。

私はまだ通院する日が続いてますが、病院に行くたびに、世の中には私以上に病気で苦しんでいる方がまだまだ沢山お見えになる事を実感しますが、

決して病気に負けないでといつも思います。

 

長い闘病生活で痛い思い出ばかりの病院ですが現在も数ヶ月に一度ハートセンターへ通院しておりますが、

なぜか病院の中に入るとほっとするんです。

それは看護師さんが、「お元気なられましたね。」と優しい一言をかけて下さるからです。

 

なので今はハートセンターは私の心のホットステ-ションです。

 

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その後私は住み慣れた名古屋を離れ、郷里奈良に新たなハートセンターを立ち上げました。

これまでできなかった親孝行と地元への御礼をと長年念じていたからです。

名古屋時代の患者さんも多数奈良の外来へお越し下さり、いつも感謝しています。

上記の患者さんは遠方かつ事情によりときどき仲間から経過をお聞きする程度でした

2年経ち以下のメールを頂きました。

心の絆、そして当時から大切にし現在も健在なチームで間接的ながらお役に立てていることを知り、感動いたしました

難しいがんを見事に発見し患者さんを助けて下さった灰本先生には心から感謝申し上げます

**さん、これからもお元気で!何かまたお困りの際にはご連絡ください

私は頼りない男ですが、できるだけのことはさせて戴きます

 

********患者さんから久々のお便り*************

 

米田先生様

大変ご無沙汰しております。先生とお別れしましてから2年余りの歳月が過ぎました。IMG_1636

 

平成24年*月にハートセンターにてペースメーカー埋め込みして頂き順調にきていまして
**先生からも、心臓に関してはもう大丈夫といわれてまして2年経った平成25年12月

 

市の検診で前立腺ガンの疑いあるとの事で、**市民病院にて平成26年1月に再検査の結果
前立腺ガンと診断受け治療開始を始める段階で2月始め灰本先生がすい臓に影があるとの事で再検査の結果
すい臓ガンとわかりそのままガンセンターに入院し3月**日すい臓摘出手術受けました。

約15mm位でしたので全部とらず少し残っていますが、ガンセンターの担当の先生にはこんな小さいガンが見つかるとは非常にラッキーだと申しておりました。
平成27年3月**日迄抗がん剤治療受けておりましたが今は終了してます。
現在は、前立腺ガンは、**市民病院と、すい臓ガンはガンセンター 心臓病はハートセンター**先生
総合的には灰本先生に診察を受けております。、以前先生がハートセンターを、おやめになるときに心臓病
以外病気、特に、ガンなどをみて頂く先生が、春日井にお見えになると紹介して頂いた灰本先生

私は米田先生に心臓病助けて頂き、すい臓ガンを灰本先生に見つけて頂きお二人の先生に
感謝に絶えません。

 

私が米田先生との出会いがなかったら今の自分がいなかったでしょう
先生には大変お世話になりました有難う御座いました。現在は仕事セーブしながら過しております、

米田先生様のご活躍をお祈りいたします。

 

H27年5月**日  ****

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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