最終更新日 2020年2月22日
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◾️腹部大動脈瘤の手術
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腹部大動脈瘤(略称AAA)の直径が通常約50mmになれば手術適応となります。
それは、「手術しない場合より、する場合の方が明らかに安全です」という意味です。
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これは瘤の直径が50mmを超えれば破れる確率が高くなることと、
腹部大動脈瘤の手術死亡率が1%を大きく下回り、ゼロに近いという安全性を勘案してのことです。
腹部大動脈瘤が破裂してからの死亡率は格段に上昇します。
病院にたどり着いた時にはすでにショック状態になっていたり心臓が止まったりして全身が壊れているからです。
破裂するまでにオペすることが大切なのです。
とくに高齢者の患者さんの場合、これはいっそう大切です。
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◾️腹部大動脈瘤の手術手技は
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出血しないようにしておいて、瘤を切開し、
止血ののちサイズが 合致する人工血管を縫合して瘤を人工血管で置き換えます。
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手術中には腎動脈が分岐するところより足側の腹部大動脈瘤では、腎動脈の足側を遮断しますが、
瘤がもっと頭側に進展している時には腎動脈の頭側を遮断し、なるべく短時間で吻合して遮断解除するようにしています。
これは腎臓を守るためです。
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◾️腹部大動脈瘤の手術、私たちの工夫
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私たちの腹部大動脈瘤手術の特徴は、普通の瘤だけでなく、以前に他院で腹部手術や瘤手術された患者さんが何年も経って再度悪化した再手術例が多いことです。
こうしたケースではお腹の中が癒着しているため、丁寧に剥離し、それからオペの核心部分へと進むため、手間暇がかかります。
しかし心臓での重症例・再手術例の経験を活かして患者さんの期待に応えるためにがんばっています。
状況によっては後腹膜アプローチといってお腹から瘤に行くのではなく、
斜め後ろから瘤に行く方法をもちいて、お腹の中の剥離なしで治療することもあります。
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腹部大動脈瘤の人工血管置換手術は安全性も高く、長期間の安定性も良いため現在も重要な標準治療法となっています。
心臓のミックス手術(MICS)の方法を導入し、お腹にも小さい創で手術操作をおこなうようにしています。
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◾️腹部大動脈瘤に対するステントグラフト
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ただし瘤の部位や形態・状況あるいは患者さんの年齢・体力によっては、やや不完全で長期成績が未知数のステントグラフト(EVAR)を用いて、
低い侵襲(体への負担)の治療をすることが増えつつあります。
たとえば超高齢者とか全身麻酔も心配なほど肺が悪い患者さんや、
その他体力に懸念があるようなケースですね。
(手術事例をご参照ください)
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このステントグラフトなら術当日から食事が再開でき、
翌日からはほぼ普通の生活に戻れ、社会復帰もきわめて早くなります。
今後はその進歩によりこちらが標準治療になるかも知れません。
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その一方でステントグラフトよりも従来型の外科手術の方が安全と判断される場合はそちらを選択します(手術事例)。
最近の米国の報告では70歳を超えるとステントグラフトよりも従来型手術のほうが生存率が高く、成績が良いという結果がでていて、波紋を呼んでいます。
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要は複数の選択肢をもち、個々の患者さんに有利な方法を選ぶのが良いと考えます。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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John Doe says
拝読致しました。スタンフォードA型大動脈解離とその後半年後に腹部大動脈瘤摘出&Y方人工血管置換手術を体験致しました。
ネット上では患者本人や家族が一番知りたい手術時前後の検査や入院期間中のさまざまななすべき事、なされることに付いての説明があまり出ていないのが残念です。
私は野次馬なのか、知りたがりなのか全ての事柄を子と細かく記憶し、記憶にしたがって全て書き留めました。
その理由は知人が同じ手術について不安だと言うので
「入院から退院までこう言うことをするんだよ、決して怖くないよ。こんな検査をするんだよ」と説明してあげる為です。手術室以降ICUで目覚めるまでの間はまったく判りませんが、知っておけば患者(私)はもっと気楽だったと思うのです。
CT、MRI,血圧検査、血液検査、Xレイ、エコー、心電図、ペルサンチン・シンチグラフィー、ガンマー線写真撮影、ABIなどなど。次は何をするのだろう、検査は痛いのだろうか・・・は不安の元です。私は性格上「先生を信頼しているから死んでもいいや!好きにしてください。死んだら臓器を役立ててください」と笑ってました。68才です。現在体験した流れを英文に翻訳して暇つぶししております。私は医師、看護師、薬剤師、事務員諸氏、栄養士、病棟清掃員他皆さんに感謝しております。そして尊敬し敬意を持って半年目の今日を迎えております。医師が患者を巣から救ってくださったのですから、私は次の患者さんが安心して病院の門に入れるようにして差し上げたいと思うのです。