◾️難病への心臓手術
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難病の患者さんへの心臓血管手術はどのくらいできるのでしょうか?
医学が発展進化した現代でも難病はまだまだあり、多数の患者さんが苦しんでおられます。
医学医療の各分野でさまざまな取り組みがあり、私たちも専門家の観点から微力ながら努力して来ました。
心臓血管外科に関連した難病も少なからずあります。
厚生労働省の臨床調査研究分野対象130疾患の中でもいろいろな疾患に治療経験があります。
その一部を挙げます。
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◾️サルコイドーシス。。。
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この病気にやられるとサルコイド心として拡張型心筋症や僧帽弁閉鎖不全症をおこします。
複雑な形態を示すことが多いですが、左室形成術や僧帽弁形成術である程度以上、治せます。
心臓手術のあとの丁寧なフォローつまりアフターケアも大切です。→→もっと見る
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◾️Budd-Chiari症候群(バッドキアリー症候群)。。。
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下大静脈から心臓(右房) への血流が流れるようにすることで治せます。
ただし心臓手術までに肝臓が肝硬変となり機能しなくなっているとリスクが高くなります。場合によってはカテーテル治療もあわせて方針を立てるという柔軟な姿勢で臨んでいます。
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◾️ベーチェット病。。。
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ベーテェット病そのものは心臓手術では治せませんが、僧帽弁閉鎖不全症や大動脈瘤を発症すればそれは手術で治せます。
組織が弱いため、相応の対策や工夫を行います。
内科の先生と協力したアフターケアも大切です。
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◾️全身性エリテマトーデス (SLE) 。。。
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この病気そのものを心臓手術で治すことはできませんが、二次的に起こる弁膜症などを人工弁などで治すことは可能です。
手術手技の工夫も大切ですが、その後のきちんとしたアフターケアも大切です。これには膠原病内科や内科の先生方と協力して長期の安全を図るようにしています。
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◾️高安病(大動脈炎症候群)。。。
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弁膜症や大動脈瘤あるいは狭心症を発症すれば心臓手術の適応となります。
組織が病気で壊れるため、縫いつけた人工弁や人工血管あるいはバイパスグラフトが不安定にならないうような工夫を行います。
大動脈弁が壊れればデービッド手術やベントール手術が役に立ちます
術後のステロイドなどのお薬による治療も術前同様、大切で、病気が進まないように、内科とくに膠原病内科の先生方とチームをつくって長期体制をつくっています。→→もっと見る
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◾️バージャー病。。。
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この病気は痛みが大変強いため、患者さんと向き合って治療に当たるものにとってはつらい残酷な業病でした。
bFGFによる血管新生・再生医療を開発し、これによってかなり治る病気になりました。(現在、中断しており準備中です)→→もっと見る
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◾️肥大型心筋症 HCM、HOCM、IHSS。。。
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肥大が左心室の出口を狭めるタイプ(HOCMまたはIHSS)では心臓手術は良く効きます。
経験がものを言う術式です。私たちはトロントのウィリアムズ先生直伝の方法で安定した成績を持っています。この手術で実績のある病院は少ないためご相談ください。→→もっと見る
左室の壁全体が分厚くなるHCMの中で、心尖部肥大型という、左室心尖部(先端部分)が筋肉で埋まるタイプも、心臓手術で治せるようになりました。この手術の実績がある病院はわずかですのでお問い合わせ下さい。→→もっと見る
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◾️拡張型心筋症DCM。。。
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難病の代表格の一つと言われています。あまり悪くなると人工心臓や心移植が必要となることがあるため、できるだけ先手を打って心臓を守る、できれば予防するという姿勢で臨んでいます。しかしいったん病気が進んで、左室がつよく拡張すれば心臓手術はむしろ効果的で成績も安定しています。
病気で壊れた左室部位によってバチスタ手術、セーブ手術、オーバーラップ手術、ドール手術などを使い分けます。2012年から開始した心尖部凍結型の左室形成術は患者さんの体への負担が少なく、成績のさらなる改善が得られつつあります。→もっと見る
私たちのHGFをもちいた再生医療でも動物実験段階ではすでに治療効果を出しており、今後の実用化が期待されています。
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◾️拘束型心筋症。。。
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お薬も外科手術も容易ではない病気です。
左室形成術には適しませんが、弁膜症や冠動脈病変が合併すればそれを治すことで比較的安全に左室を改善することはできます。
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◾️原発性肺高血圧症。。。
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現時点ではお薬などの内科治療が中心ですが、再生医療で動物では安全にかなりの改善が得られており、今後実用化を目指したく考えています。
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◾️難病への対策まとめ
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難病でもそれに付随する病気は治せることも多々ありますし、完全治癒は難しくても、現状を守ることはできることもあります。
難病という言葉自体が良くない言葉と思います。治らないような印象を与えるからです。
難病と言われた患者さんにおかれましては、決して絶望されず、まず現実をしっかりと把握し、
専門家に相談し、病気と向き合い、時には病気と闘い、時には病気と仲良く共存し、
という粘り強い柔軟戦略が良い結果を生みやすいと思います。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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