マレーシアはクアラルンプールで開催されたバルブサミット(心臓弁膜症サミット)に行って参りました。
僧帽弁の話しと、大動脈弁の話しをさせて頂きました。
僧帽弁ではこれまで力を入れて来た心筋梗塞後の虚血性僧帽弁閉鎖不全症の新しい手術治療を、
大動脈弁では大動脈基部拡張に対する基部再建手術(私の恩師の名前をとってデービッド手術といいます)に相当するものをより短時間で確実に行う方法を講演しました。
体力のない高齢者の患者さんや他に重い病気をもっていて余裕がない患者さんを安全に救命するための方法です。
ライブ手術も数件あり、パリのペリエ先生やタイのタウィーサック先生らを始めとした先生らの手術を皆で温かく厳しくDiscussionしました。
僧帽弁形成術がおおく、小切開手術(MICS、ポートアクセス法)もありました。
15年以上前からある方法ですが、少しずつ工夫し完成度を上げているのが判ります。
エプシュタイン病の大人の三尖弁形成術もありましたが、右心室を治していないのがちょっと不満でした。
カテーテルを用いての弁膜症手術(TAVI)もありました。
まだまだ未発達のところもありますが将来の有望治療法です。日本ではいつのことになるのでしょうか。
心臓外科全般についてアジア諸国の発展ぶりは経済発展と同様、めざましく、アジアの先生方が誇りをもって頑張っていることをあらためて感じました。
心臓弁膜症についても同じで、これまでは日本の心臓外科医が指導する場面が多かったのですが、これからの時代は教えて頂くようになるのかも知れません。
(写真は有名なクアラルンプールのツウィンタワーです)
平等な国際交流という意味ではそれも良いのかも知れません。
ただそれが日本独特な構造的弱点のために他のアジア諸国よりも力を落としたためと考えると、次の時代に向けて何とかしなければならないと思います。
日本独特の構造的弱点というのは、要するに心臓外科医が他のアジア諸国の心臓外科医ほど手術ができない構造のことです。
日本でも民間病院では外科医一人あたりの手術数はある程度は増やせるため何とかなりますが、国全体として改善が必要です。
学会も様々な努力をしているのですが、なかなか進みません。
サミットには欧米の有名な心臓外科医も多数来ておられ、昔から良く知っている先生もあり楽しいひとときが持てました。
クアラルンプールはアジアの文化、イスラム文化、そして旧英国領ということでイギリスの影響もあり、なかなかユニークな街です。
せっかくの機会なので、ちょっと学会場を抜け出して写真を撮りに行ったりもしました。
そのうちにこのWEBのギャラリーに迷作として披露したく思います。
街中のショッピングモールは東京やニューヨーク、パリなどを思わせるような立派なものでしたが、聞けばイスラムのよしみで中東からリッチなお客さんが多数来られるため高価な商品もよく売れるとのことでした。
庶民での不況はないのかいと尋ねたところ、イスラム銀行が支援するので、他の国ほど不況の波を受けないとのことで、
ホントかなと思いながらも、イスラム教が多くの民衆を惹きつけて来たことの理由の一部を見た思いがしました。
米田正始
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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