阪神大震災から15年が経ちました(写真左)。最近はハイチの地震で何十万人の被害者がでています(写真最下段)。地震は本当にやっかいなものです。一日も早く予知ができるようになればと思います。
地震の原因はよくメディアでも報道されています。地球のマントル対流のためにプレートが移動し、そのプレート同士の接点のところでひずみが蓄積されそれが何かのきっかけで一気に取れるとき、振動が起こって周囲が揺れるのです。そのプレートの動きが心臓の心室心筋の動きに似ていて、解決のための何かのヒントにならないものかと思うことがあります。
心臓の中で全身ポンプの役割を果たす左心室は何層にも心筋(心臓の筋肉なので心筋と呼びます)が折り重なり、ベストの動きができるようになっています。地球で言えば多数のプレートがお互いになじみ、きれいにすべりながら動いているのです。すべりながら動くお蔭で心筋へのストレスが分散され安全に仕事ができるというわけです。もっとも心臓自体はよく動きますので、ミクロの地震をいつも起こしているとも言えるのかも知れませんが。
心臓のプレートがずれて行くために左心室のねじれ運動や血液を送り出している最中の壁の 肥厚(収縮期肥厚)がスムースに行われます。写真右はバチスタ手術の最中の心臓とねじれ運動(矢印)を示します。心筋梗塞のあとや心移植後の拒絶反応のときにはこのねじれ運動が障害されたりパタンが変わったりします。心筋梗塞でやられた部位とねじれ運動の変化が起こる部位が必ずしも同じでないところに絶妙の構造がうかがえます。
つまり心臓全体のバランスの中で局所の動きが成り立っているということです。ねじれ運動や収縮期肥厚のおかげであまりエネルギーを使わずに左心室は血液を全身に送りだせるのです。おもえば地球もひずみの蓄積が地震で取りはらわれなければ地球そのものが壊れてしまうのかも知れません。
だからと言って地震をそのまま容認するわけにはいきませんので、やはりエネルギーの蓄積とその放出(つまり地震)の関係やタイミングを正確に測定・予知できることが大切と思います。どういう所見が出てくればまもなくプレート境界部でエネルギー放出が起こるのか、ということですね。
逆に、地震の予知ができる技術が進歩すれば、心臓のエネルギー効率もより改善でき、心不全などの治療にも役立つようになる、などと考えるのは心不全や心臓病の治療に命をかけて来たものの性癖とでも言えるのでしょうか。ともあれ地震の被災者の方々のご冥福や一日も早いご回復を祈らずにはおれません。
2010年1月25日 米田正始
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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