明けましておめでとうございます
旧年中はこの心臓外科医の日記ブログを読んで戴きありがとうございました。今年もよろしくお願い申し上げます。
昨年は世の中も医療の世界もさまざまなことがありました。
政権交代があり、医療についてもこれまでの問題点とくに医療崩壊について熱い議論がさ れるようになっています。新年早々ですので、なるべく肩の凝る話はしたくないのですが、医療の世界とくに公的病院での税金の無駄遣い(たとえば仕事もしない天下りの人たちへの高給)に光が当てられるとともに、患者さんや社会を守るための予算を削減されないように皆で努力する必要があります。福祉や医療のための予算を毎年2200億円ずつ削減されて来たのが昨年、ようやく止めになりました。しかしその打撃から立ち直るにはまだまだ時間がかかりそうで、その間、患者さんを守る必要があります。
医療は、とくに心臓関係は365日24時間体制でなければなりません。ただし現在の医療費・医療体制では完全シフト制を敷くだけの人手は雇えず、職員の献身的ボランティア精神で何とかうまくこなしているのが現状です。たとえばハートセンターでは緊急手術となれば待機メンバーが直ちに病院へ来てくれて当直医と合流し、いつでも必要な手術ができます。私のような中間管理職?もその時のために病院から歩いて10分(走れば3分!)のところに住んでいます。
逆にそうした工夫ができない病院では診療拒否とかたらいまわしなどが起こっています。救急車でのたらいまわしなどの目に見える医療崩壊はまだ議論になりやすいのですが、重症患者さんなどをリスクが高いからと手術・治療や検査さえ拒否したり遅延させるような形での医療崩壊は社会から見えにくく、根深い問題です。名古屋で仕事を始めて1年余り、そうした公的病院内での医療崩壊を多数見て来ました。
この不況の時代で明るいニュースはあまりないのですが、これまで私たちが主張してもなかなか議論にもなりにくかった上記の話が「話しになる」状態になり、徐々に解決策へと進めそうな雰囲気になっているのは幸いです。またこれまで医療費亡国論つまり医療費に予算を投入すると日本経済はダメになるという誤解があり、そのために医療費を削って道路工事などに多額のお金を投入するというのが日本の姿でした。しかしそれは誤りであると科学的に証明がされました。その話しはまた別の機会にご紹介しますが、とにかく今後の医療や福祉の充実のためには役立つ情報です。
これからの時代は患者さんや市民の皆さんが声を出して問題を解決することも大切かと思います。結局堅苦しいお話になりました。申し訳ありません。
皆さん、今年も真摯にかつ明るく楽しく前向きに進みましょう。
平成22年1月1日 米田正始 拝
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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