マルファンネットワークジャパンは1996年に名古屋で誕生しました。
当初はホームページを立ち上げ、
米国のナショナルマルファン財団(NMF)を参考にして、
患者さんやご家族に有用な情報を提供し相互の連絡や親睦をはかるところから活動が始まりました。
その少し前、1993-5年ごろ、著者(米田正始)がアメリカ・カリフォルニア州にあるスタンフォード大学に留学していたころ、
NMFの集まりがあり、立派なハンドブックも出版され、会員に恩恵が届く活動が行われていました。
そこでそのハンドブックを翻訳し日本でも役立てて戴く努力をしましたが、
その当時は出版するだけのスポンサーも得られず、立ち消えになっていました。
ちなみにスタンフォード大学にはフィブリリン遺伝子の解析などで大きな貢献をされたFurthmayr教授夫妻や、
大動脈の外科治療で多くの実績を出されたわが恩師 D. Craig Miller教授らが活躍しておられました。
その後マルファンネットワークジャパンは年々活動の輪を広げ、4つの目標に向かって発展しています。
4つの目標は
(1) 情報の収集と提供
(2) コミュニティの形成
(3) 社会活動
(4) 生活環境の向上
です。
私は上記のスタンフォード時代からのかかわりもあって、医療アドバイザーとしてささやかながら貢献させて戴いております。
マルファンネットワークジャパンの総会に参加したことがあります。
皆さん和気あいあいと、しかし良く勉強し、
講師を招いて、臓器別疾患別に分科会も開いてしっかりした勉強や質疑応答がされていました。
自分たちの健康は、サポータの支援を受けながらも、自分たちで守るのだという積極性が感じられました。
私は心臓血管外科医の立場から心臓血管病の分科会で勉強会相談会をやらせて戴きましたが、
皆さんそれぞれ長期の闘病や健康管理に大変努力しておられる様子が具体的にわかり、
包括的かつ迅速、専門的な支援が重要とあらためて感じました。
1998年に帰国し京都で心臓血管外科の仕事をするようになって、
マルファン症候群の患者さんがよく来られました。
中には他院で手術を受けたが、今後のフォローアップをお願いしますといったケースもありましたが、
日ごろから状態を把握し、患者さんにも注意点のポイントを指導していたためか、
大動脈の別の部分が突然解離したときも、患者さんもあわてずに直ちに来院、
てきぱきと緊急手術ができ、元気に回復して戴いた経験もあります。
病気の特徴を捉えて、備えあれば憂いなし、と思いました。
20年以上前、まだ私が研修医修練医のころ、マルファン症候群で大動脈基部拡張症のためベントール手術を受けられた患者さんが、
体は元気になったのに将来を心配して落ち込まれ、あまり生活の質が上がらなかったことを今も忘れることができません。
マルファン症候群には遺伝だけでなく突然変異で発症するケース がよく知られており、
どのご家庭にも発症し得る、社会全体の課題なのです。
将来はフィブリリンの遺伝子治療や再生医療で結合組織の強化を図れば、
いずれは元気に一生を健康人と同じ形で過ごせるようになるものと思いますが、
それまでの間、あるいはその治療が奏功しづらいときにわたしたち心臓血管外科は患者さんの守り神として貢献できるものと思います。
またニューロタンのように大動脈をある程度は守ってくれるお薬がこれから順次増えて行けば、長期の安定性も改善するでしょう。
マルファン症候群の患者さんたちの未来は明るい、
しかしまだしばらくの間は油断禁物、
そして油断しなければ現時点でも安全性はかなり高まって来ていると思います。
これがマルファンネットワークジャパンや患者さんたちへの私からのメッセージです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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