全国心臓病のこどもを守る会は心臓病のこどもさんとご家族を守るため昭和38年に発足した会です。多くの方々の支持と支援を受け、5300世帯の会員を有する大きな組織に成長し ました。
私(米田正始)はかつて天理よろづ相談所病院で研修を受けていた1980年代に、こどもの患者さんが多数おられたことからこの会の活動はよく聞いていました。とくに日本の小児循環器のパイオニアのひとりである田村時緒先生から教えられたこともあり、機会があれば患者さんのご家族に入会を勧めていました。
長い留学時代を経て1998年に帰国し、京大病院で仕事をするようになり、この会の代表的な方々と交流ができ、講演などもさせて頂いたことがありますし、会誌に投稿させて頂いたこともあります。いつも皆で学び、考え、助け合って行動して行く雰囲気が素晴らしいと思いました。
大学病院から民間の成人専門の心臓専門病院へ移動した現在は、直接は心臓病のこどもさんと接する機会はありません。ところが15歳以上に成長された心臓病の患者さんたちの手術や治療をお引き受けする機会が増え、またこの守る会との交流が増えそうな状態になって来ました。
この数年間で修正大血管転位症、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、エプシュタイン病、右室二腔症、肺動脈弁狭窄症、ファロー四徴症、先天性僧帽弁閉鎖不全症、IHSS(HOCM)、三心房心、大動脈二尖弁、部分肺静脈還流異常症、一次口欠損症の心房中隔欠損症、ファロー四徴症、心内膜床欠損症、冠動脈ろう、バルサルバ洞破裂、左室緻密化障害その他さまざまな成人先天性心疾患の手術・治療をさせて頂きました。
なかでも修正大血管転位症に続発する三尖弁 閉鎖不全症(通常の心臓でいう僧帽弁閉鎖不全症)はもともと力が弱い解剖学的右室に大きな負担をあたえ、患者さんの予後を悪くする病気です。
私たちは先天性心疾患治療の経験と、拡張型心筋症の治療経験の両方を豊富にもつため、お役に立てる位置にあります。
そのため心臓手術はもとより、術後の長期間の薬物治療で心臓を守ります。できれば心移植や補助循環なしで元気に生きられるように、しかし必要な場合は移植施設との連携を密に取ります。
また川崎病は先天性心疾患ではありませんがこども時代に多い病気です。冠動脈が瘤(こぶ状にふくれた状態)となり放置すると危険ですが、ガンマグロブリンなどの治療を行えば治せます。ただしその子が大人になってから冠動脈が硬化や狭窄を起こすことがあり、要注意です。
心臓病のこどもさんたちの治療成績が改善し、皆が元気に大人になって行けば、その中に二次的な心臓病で治療が必要な方も増えるのが予想されたことです。心臓病のこどもたちを一生涯、長期間守れるシステムが重要と思います。そのことはかつて留学していたトロント大学のトロント総合病院に成人先天性心疾患外来があり、多数の患者さんが来院しておられたことから、日本でもいつかはこうしたことをやりたいと思っていました。
私たちはハートセンターという足腰が強い、自由度の高い環境を活かし、小児科や小児心臓外科の先生方とも相談したり適宜応援に来院して頂いたり、遠方からの患者さんのための夕方外来にも対応したり、さまざまな工夫を凝らしています。
成人の先天性心疾患の患者さんはまだまだお若い年齢の方が多く、仕事が忙しかったり美容にも関心が強かったりするため、創が小さいミックス手術(MICS、小切開低侵襲手術)が安全にできる場合はなるべくそのようにしています。
こども病院ではできない、おとな病院でもできない、そうした治療を提供できればと努力しています。幸い上記のように多数の患者さんによろこんで戴いており、さらに実績を積んでいく予定です。
全国心臓病のこどもを守る会は今後、患児とご家族を生涯にわたって支援して行く会に発展して行くのではないかと思いますし、心友会という15歳以上の(元)患者さんたちの会も活発に動いているようです。その中で私たちも貢献ができればうれしいことです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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