昭和41年に当時の東京大学胸部外科の先生方の主導で、
患者、医師、工学者によって発足された、“ペースメーカー友の会”が前身です。
現在は全国24支部、会員4000名を有する伝統ある立派な会です。
現在の会長は筑波大学名誉教授の堀原一先生です。
会の活動目的は心臓ペースメーカーによって命を救われたことを認識し、
「感謝」「報恩」「奉仕」の精神に基づいて会員の適切な健康管理、
並びに健全快適な「QOL」(生活の質)の確保を図り、
もって社会福祉の向上に貢献するとのことです。
著者(米田正始)とのかかわりは、
元々心臓外科の患者さんでペースメーカーを必要とする、
あるいは手術前からペースメーカーをお持ちであった患者さんが結構おられたことから、
周辺部サポーターという関係でした。
ペースメーカーの植え込みそのものは比較的簡単な手技ですので循環器内科の先生がされることが多いのですが、
難しいケースなどで応援するといったサポートが多かったように思います。
この数年間、ペースメーカーによる三尖弁閉鎖不全症のため肝臓がうっ血し、
うっ血性肝硬変に悪化してこのままでは肝不全ついで心不全で命の危険がある、といった状態の患者さんの治療を10例以上手がけて来ました。
ペースメーカーは三尖弁ごしに右心室にリード線を送るため、ときにそのリード線が三尖弁を壊してしまうのです。
稀な状態ではありますが、
薬や普通の手術法・弁形成法では対処できないため、グレイゾーンのようになっていた感がありました。
幸い、私にとっては僧帽弁形成術を多数行って来たノウハウが応用できるところがあり、
ペースメーカーに三尖弁がからみつき、肥厚癒合した、つまり弁がぐちゃぐちゃになっているケースでも、
弁をペースメーカーからはずし、弁をゆがませる肥厚組織を取り、それで弁の支えも無くなる場合は特殊な糸で再建する、
そしてペースメーカーケーブルを弁の端に収納するなどの方法で三尖弁が形成、再建できることがわかりました。
4)三尖弁の弁膜症 ③ペースメーカーケーブルによる三尖弁膜症とは?をご参照下さい
そうした治療で肝硬変になりだしていた患者さんたちに元気になって頂けるといううれしい経 験を何度もする中で、
日本ペースメーカー友の会の話しを患者さんからお聞きしました。
会誌「かていてる」も何冊も戴きました。
患者さんのお話では、自分の仲間の中にも同じ病気の人が何人もいて、中には苦しんでいる人もある、ぜひ助けてあげて欲しい、とのことでした。
もし友の会の皆さんでこうし患者さんをご存じの方がおられましたら、ご一報頂けると幸いです。
なお私たちの経験では三尖弁形成術だけであればミックス手術(MICS、小切開低侵襲手術)(ポートアクセス法)で
小さい創で手術ができる可能性が高いです。
他の病気が合併している場合は、その内容に応じて適切なミックス法を選ぶようにしています。
ペースメーカーは何十万人の患者さんを助けて来た素晴らしい治療法です。
その中に稀に上記の三尖弁閉鎖不全症を合併しても、それが治せるとなれば、ペースメーカーの価値・有用性は一段と上がると思います。
困ったらまず相談です。
心臓手術のお問い合わせはこちらへどうぞ
患者さんからのお便りのページへ
もとのページへ戻る
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。