このご質問をちょくちょく頂きます。お答えは次のとおりです。
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「心臓手術の前準備としての経食道エコー(略して経食エコー)は不要なことが多々あります。」
もちろん患者さんの状態・病態によりますし、情報は多いほうが良いのです。
とくにその道のスペシャリストがいる病院では、苦痛少なく精密な経食エコーができるところもあり、有意義な検査となります。
しかしそうでない施設では以下のように工夫できるという意味もあります。
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手術の適応つまりその患者さんにとって手術が必要かどうかは殆どの場合、症状や身体所見、通常の心エコーとドップラー、心電図、胸部レントゲン、CTなどで判定できます。
そして手術することがその患者さんにとって、手術しない場合よりも安全上有利と判断できれば手術適応として手術を前向きに検討することになります。
経食エコーをやるまでもなく、手術適応が判断できることは多いです。
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いまひとつの理由は経食エコーが患者さんにとって比較的苦しい検査であることです。スペシャリストがいない病院での話ですが。
普通の胃カメラでも吐き気がして苦しいのにそれより太い経食エコーの管を起きている患者さんの口の中に入れるというのにはつらいものがあります。
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それでは経食エコーは不要かというと決してそうではありません。
通常の経胸壁エコーとは異なる角度つまり後ろ側から心臓を見るため、経胸壁エコーでは得られない弁の性状や逆流・狭窄などの所見が判ることがあります。
とくに肺が膨張気味の患者さんのばあい、通常の経胸壁エコーはあまりきれいに見えないため、経食エコーの価値は大きくなります。
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そこで私たちはこれまで、通常エコーその他の検査で手術適応があると確実に判断できれば、
手術のときに、麻酔をかけて眠って頂いてから、苦しみなく経食エコーを行い、
より詳細な情報を得て、そのまま手術へと進むようにして来ました。
こうすることで、患者さんには苦痛なく正確な手術が可能となるわけです。
手術の完了までに再度経食エコーにて心臓が良くなっているのを確認し、
患者さんが眠っておられる間に経食エコーを抜いてしまいます。
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もちろんどうしても経食エコーが必要ということもあります。
その時は上記の心エコー専門家に患者さんにその必要性をお話し、麻酔剤などをうまく使って眠っておられる間に検査することにしています。
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どんな検査にも長所だけでなく短所があります。
経食エコーの長所と短所をしっかり把握し、
患者さんに苦痛が少ない形で長所をうまく活かす、これが良いと考えます。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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