2010年4月13日の中日新聞29ページ(医療ページ)に三重県の救急医療に関する記事が載っていました。
その記事の見出しを列挙しますと次のようになります。
「「受け入れ困難」改善遠く」
「救急体制強化急ぐ三重県」
「伊賀 7病院が拒否 女性死亡」
「減る医師数 即効策なし」
「三重県の搬送難 中部地方で突出」
三重県での心臓血管外科の体制も同じ問題があるようです。
名古屋ハートセンターがオープンして1年半の間に、
名古屋に近い三重県北部の四日市市、桑名市、鈴鹿市、いなべ市はもとより山間部の亀山市、伊賀上野市、名張市、時には中部の津市などや伊勢市、松阪市、志摩市さらには尾鷲市などからも患者さんがハートセンターへ心臓手術を受けに来院して下さいます。
聞けば近くの病院では受け入れてもらえなかったといいます。
それらの患者さんは比較的難易度の高い心臓手術たとえば複雑な弁形成や状態が悪い慢性血液透析の冠動脈バイパス手術とか、
再手術の複合手術たとえばバイパス手術+二弁手術後の3弁手術、
あるいは心機能が低下した心筋症+弁膜症、
今にも突然死しそうな状態の弁膜症患者さんなど、
一般にハイリスクと呼ばれる心臓病の患者さんが多かったです。
あるいは速やかな治療や対応が必要な心臓病患者さんなどでした。実際危険な状態で、外来即入院といったケースもありました。
こうした心臓病患者さんたちを三重県内ですぐに受け入れられないのであれば、
あるいはリスクが高すぎるというのであれば、
私達がお役に立てる限り受け入れていきたく思うのです。
地域医療が医師不足で大変困った状況にある今日、
どんなハイリスクでも重症でも迅速に受け入れて治療や手術をせよというのは、
病気の守備範囲が広く予算も限られている地域の病院には少々酷であり、
ハートセンターのような専門病院はそうした方々のためにも存在すると思うのです。
伊勢自動車道や東名阪自動車道など高速道路網の充実 によって三重県からの名古屋市へのアクセスもずいぶん改善されました。
地元の病院・医院と連携し、遠方からでも来て良かったと言って頂けるよう、チームとして全力をあげています。
外来受診から方針決定まで3往復3週間(ときに4往復4週間)という大学病院などの公的病院ではできない、
1往復数時間の患者目線の医療をチーム全員で努力して支えています。
大学講座人事に依存した従来型の病院が医師不足で動けない状況にある現在、
こういう県境を越えた地域医療、医療連携も有意義ではないかと思うこのごろです。
距離は多少遠方であっても心は遠方とは限らないのです。
2010年4月14日 米田正始
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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