心臓弁膜症の名医とは―冠動脈の名医と必ずしも同じではありません【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月24日

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◾️弁膜症を熟知していることが必須です

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心臓弁膜症の名医とは?とよくご質問をお Fotosearch_CCP08004受けします。

心臓病の名医心臓手術の名医と共通するところも多いのですが、

以下の状況を熟知し、適切な治療(お薬か手術かなど)を適切なタイミングで行い、

ベストの寿命とQOL(生活の質)を取り戻してくれる医師、

ということになると思います。

したがって心臓弁膜症を深く理解していることが必要です。

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◾️弁膜症の診断は心エコーが中心です

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弁膜症の診断の多くは心エコーでつきます

カテーテルでは弁の逆流はカテーテル先端の位置が必ずしも一定でなく、

かつ造影剤という血液とは異なる液体を急速注入するため不正確な情報になることがあります。

Fotosearch_CCP02029かつてはエコーが未発達でしたのでカテーテルによる造影検査がGold Standard(ゴールドスタンダード)つまり検査の主流を占めていましたが、現在はそうとは限りません。

エコーを専門とする内科の先生に心臓弁膜症の名医が多いのはそのためもあります。

 

さらにカテーテルによる情報は圧の情報(たとえば左室圧など)が主でこれは有用です。

その一方、カテーテルによる造影の情報は影絵だけですので、

科学的な心臓生理学の観点から必要な左心室の各部位での壁運動性、左室の収縮機能(血液を送り出すちから)と拡張機能(血液を吸い込むちから)、

左室壁の各部位の厚さやその変化、

乳頭筋や腱索の3次元位置や機能の情報、

左室壁の各部位のねじれやたわみといった詳細な科学情報はエコーが断然有利です。

 

それもあってカテーテル中心の冠動脈の専門家が必ずしも弁膜症に詳しくないというケースがよく指摘されています。

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◾️心不全など重症弁膜症がらみの場合も心エコーが必須

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心エコーは外来や入院時のみならず手術室でも大活躍します。手術室に高性能機を常備し、常に役立つ情報を得られるようにしています。 また心臓弁膜症によって左室や右室が

拡張(心室壁が薄くなり心室容積が大きくなります)したり

肥大(心室壁が厚くなります)して変化を来たします。

 

中には拡張型心筋症心不全に進行するケースも多々あります。

 

これらの詳細な情報は上記のようにエコーが有利です。

冠動脈の検査とは異なる視点が必要となります。

 

MRI検査は、よりきれいな画像やエコーやカテーテルとは違う観点の情報も得られるため有用です。

ただし手術中やICUでは使えませんし、

町の診療所や地方などでは制約が大きく、

総合点ではエコーのほうが上と思います。

まして医療費節約を社会全体で求められている今日、高価なMRIの乱用を避けることが社会にやさしい医療です。

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◾️虚血性の僧帽弁閉鎖不全症でも心エコーは重要

図 虚血性MRメカ

近年、狭心症に対してカテーテル治療PCIを繰り返し行ったり、大きな心筋梗塞のあとは左室が大きくなり形も崩れて虚血性僧帽弁閉鎖不全症というある種の弁膜症になることがあります。

これは弁の病気の形をした心室の病気で、最近はこの病気が増えています。

これを治すには僧帽弁や左心室の各部位のジオメトリーを詳細まで理解していることが必須です。

それでリモデリングと呼ぶ心室の二次的変化をジオメトリー変化として良く理解している医師が名医になりやすいのです。

結果的にエコーに詳しい医師が虚血性僧帽弁閉鎖不全症を治せるということになります。

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◾️内科と外科の協力に慣れていることも弁膜症では必須

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弁膜症の治療そのものにつきましては循環器内科と心臓外科の両方の弁膜症は冠動脈とは別の視点が必要です。同時に内科も外科も重要です。 視点が必要です。

弁そのものは薬では治しづらいため治療の中心は心臓手術つまり外科医の仕事になりますが、

その前後のキメ細かい調整はお薬で行うため、

内科と外科の両方が大切になるわけです。

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◾️そこで、弁膜症の名医とは、、

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こうした状況から心臓弁膜症の名医とはステントやPCIなどの冠動脈のそれとは必ずしも同じでなく、

弁膜症に独特な科学的視点をもった、かつエコーなどの画像診断に詳しい内科医と外科医ということになるわけです。

実際、冠動脈の優秀な専門家が、症状が少ないからと大動脈弁閉鎖不全症の患者さんをそのままにして弁形成術のタイミングを逸したとか、

僧帽弁閉鎖不全症の患者さんを左室がかなり壊れてから外科医に紹介して弁形成術後も心機能低下が残った、

長生きできないなどのケースが知られています。

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そのため患者さんのみならず開業医の先生や一般内科の先生方におかれましても、

弁膜症の治療方針を決めるときに弁膜症に詳しい循環器内科や心臓外科あるいはその両方の意見を参考にして戴くのも一法かと思います。

これによって日米のガイドラインが活かせるというものです。

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質問1:今後の心臓弁膜症の名医の方向は?

 

回答1:弁膜症の領域でも今後は内科と外科が一体化した診療が増え、名医も内科外科の融合型になるかも知れません。

胸骨を切らずに早い社会復帰・仕事復帰を図る 小切開低侵襲手術(ミックス手術、MICS) あるいはポートアクセス法とか、

カテーテルをもちいた弁置換手術たとえば TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術) などは一体化診療の一例です。

それにも足の血管からカテーテルを入れる方法と左胸を小さく開けてそこから心臓の先端部経由で直接カテーテルを入れる方法があります。

現時点ではカテーテルの弁はまだまだですが、

将来、選択肢が増えれば、個々の患者さんに最も適した方法を吟味して選ぶ時代になることでしょう。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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