お便り27 収縮性心膜炎の患者さん

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患者さんは50歳男性で

難治性心不全のため大阪から名古屋ハートセンターまで来院されました。

 

ことの起こりは次のようなお手紙(①)を患者さんのお母様から頂いたことでした。

心筋炎後の心筋症のため心不全に陥っておられるものと拝察し

早速名古屋まで来て戴きました。

その段階では場合によって僧帽弁形成術左室形成術などが必要かも知れないと考えていました。

 

検査の結果、重度の収縮性心膜炎であることが判明し、

まもなく手術を行いました。 Ilm10_de01003-s

 

心膜は厚さが1cmにもなるほど肥厚しており、

それも心臓の前後左右ともで、収縮性心膜炎の中でもかなり重い状態でした。

患者さんはほとんど動けないほどになっておられました。

 

手術ではオフポンプ冠動脈バイパスの方法を用いて体外循環を使わず、

肥厚した心膜を徹底して剥離・切除しました。

横隔膜面の心膜も病変著明だっためこれも切除しました。

 

その結果、収縮性心膜炎はほぼ解消され、心臓の性能は大きく改善しほぼ正常レベルにまで回復しました。

患者さんの症状が軽快しお元気になられたのは言うまでもありません。

術前の硬いご表情が柔らかな笑顔に変わったのが印象的でした。

 

退院後に患者さんのお母さんからまたお手紙を頂いたのが②です。

簡潔なお手紙のなかに心のこもったものを感じ、うれしく思いました。

 

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お手紙①

 

前略 突然のお手紙お許し下さいませ。

昭和35年生まれの長男が平成20年1月、急性心筋障害の為3ヶ月の入院、その時心臓の働きは健常者の2分の1ですと云われ多量の薬を服用して現在に至って居ります。

ダラダラ歩きは良いのですが、普通の速度ですと5分もしないうちに胸が苦しくなり顔は黒くなります。又、目の前が暗くなり座り込む事も有ります。

米田先生の事を知りまして、すがる思いでペンを取りました。私母74歳、母ひとり子ひとりですので私の元気なうちになんとか手術をして軽い仕事にでもつかせたいと願うばかりです。本人も強く望んで居り、希望が見えてきたように明るくなっています。

どうぞよろしくお願い申し上げましてペンをおきます。

米田先生御手許へ

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お手紙②

お便り27の実物写真 前略 退院の日はオペ室に入られたとのこと仕方なく帰って参りました。
本当に有難うございました。

帰路桜散る名古屋城の桜並木を歩いておりまして、気がつけば長男が先を歩いて居りまして、声をかけると本人も後ろを歩いている親を見て驚き感激して植込みに散り積もった桜の花びらを両手いっぱいにして頭からふりかぶって居りました。

外見とのギャップがありすぎて苦笑やら泣き笑いでございました。

18日はお伺い致しますが、お忙しい先生のこと必ずお遭い出来るとは限りませんのでお手紙致しました。
くれぐれもご自愛下さいますように。

米田先生御手許へ

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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