お便り30 血液透析と狭心症の患者さん

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透析の患者さんは冠動脈バイパス手術で救われます 世の中には治療すれば助かる見込みの高い病気なのに、早合点して諦めたり、よく考えずに誤った選択をして亡くなる患者さんがおられます。

慢性腎不全で血液透析を週3回、長年続けて来られた患者さんはしばしば冠動脈がやられて詰まったり狭くなります。しかしそうした時にはカテーテル(PCI)によるステントよりも冠動脈バイパス手術が患者さんの寿命を延ばすことがよくあります。データがそれを示しています。いわゆるEBM、つまり証拠に基づく医学医療ですね。

以下の60代の患者さんも永年の血液透析のなかで冠動脈疾患を合併し、狭心症のため透析ができなくなり、三重県からハートセンターへ来院されました。ただちに調べ、危険な状態のためその日のうちに方針を立て、まもなく冠動脈バイパス手術し全快されました。全身の状態に余裕がないため、いつもどおり体外循環を使わないオフポンプバイパス手術を使いました。

現在は血液透析中に血圧が下がったり苦しくなることもなく、安全に透析や毎日の生活が送れる Ilm10_dh03002-s ようになっておられます。

慢性腎不全・血液透析の患者さんが長期的にお亡くなりになる原因の多くは心臓血管系の病気が合併することです。そこでバイパス手術で心臓が長期間安定するようにすれば、透析の患者さんにも長生きできる道が開けるわけです。

以下はその患者さんのご家族からのお手紙です。

****** お手紙 ******

 

拝啓

 

秋というのにまだまだ暑い日が続いておりますが、米田先生にはますますご活躍のことと存じます。

この度は手術をはじめ、父が大変お世話になりありがとうございました。

思い返すとあれは春頃、父は透析中の血圧低下が多くなり、毎日不安な日々でした。
その頃から歩いていてもすぐ椅子に腰を下ろして休んでいる姿を見るようになり、聞くと胸が苦しい気がすると言っていました。

お便り31の実物写真 その後、総合病院での診察をお願いする事になったのですが、当たり前とは思っていましたが、予約を入れて一つの検査をするのに一週間、診察の予約が一週間とすべての検査と診察に一ヶ月かかり、その診察時に医師は「**さんの場合は発作が起きたら即死の場所ですよ」とおっしゃいました。そして早い手術で七月末か八月との事でした。

私はこの医療体制、医師の会話に疑問でいっぱいになり、病気についてやいろんな事について調べる様になりました。実は当初、父も母も心臓の手術は全く考えておらず、できる範囲の手術のない治療でと思っていました。それはこの十年、父は入退院を繰り返していましたし、その頃から医師にいつ心臓や脳の発作で倒れてもおかしくない事、また同じ年代の透析病院のお仲間が一人、二人と亡くなっていき、半年ほど前も心臓の手術をした方が術後二週間で亡くなったのを目の当たりにしたからです。

ですが、病気の事を調べていくうちに色んな事を知り、その中でも米田先生のウエブサイトは全て読ませて頂きました。「倒れたらそれも天命」と少しでも思っていた自分を恥じる気持ちでいっぱいになりました。無知とは恐ろしい事です。

その後、貴ハートセンターにお電話するとすぐ予約を入れて頂き、先生が海外から帰国されるのを心待ちに一日、一日発作が起きない事を祈りながら過ごしておりました。

米田先生にお会いできた七月一日は家族一同忘れられない一日です。お話からお人柄が素晴らしく、医師のあるべき姿だと痛感しました。先生との会話の中で「救える命がたくさんあるのに間に合わない方がたくさんおられる」その言葉に本当に心打たれました。

その日を境に凄まじい速さで時間が流れました。早い対応をして頂き、入院、手術と米田先生のお陰で手術中も安心して過ごす事ができました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。また多くの先生方、スタッフの皆様にも大変お世話になりました。宜しくお伝えください。

書面にて長々とお話しました事どうかお許しください。父がまた体調に異変がありましたら今後ともご相談、ご指導頂けましたら嬉しく存じます。

大変なお仕事ですが一人でも多くの命を救ってくださる事をお祈りしております。

本当にありがとうございました。

敬具

 

平成二十二年九月

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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