お便り34 感染性心内膜炎(IE)の患者さん

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感染性心内膜炎(略称IE)は怖い病気です。

ばい菌が心臓の中で増えて弁や筋肉、血管などを壊すだけでも重い病気ですが、

そのばい菌の塊が血液の流れに乗って脳へ行けば脳梗塞になりますし、

体のどの臓器へ流れてもその臓器に感染が起こります。

 

  9ilm17_da05017-s月下旬のある日、広島からメールが届きました。

感染性心内膜炎で脳梗塞を起こされた患者さんの御家族からでした。

内容から考えて、これは何とかできるし、

また何とかしなければならない、と判断し、

名古屋までお越し戴きました。

 

治療の方針として、お薬で感染がかなり落ち着きつつあるため、

まず完全に菌を消し、菌の心配がない状態にし、

そのうえで僧帽弁をしっかりと形成する、

脳梗塞はある程度時間が経っているため脳を守りながら手術をすれば経験上、十分行けるという方向で考えました。

 

手術は僧帽弁のほぼ右半分を形成する、

人工腱索も8本立てる、

比較的複雑なものになりました。

私たちはこうした手術は平素からこなしているため落ち着いて完遂でき、弁はきれいに治りました。

 

以下はご家族からのメール複数回を束ねたものです。

患者さんの状態が良くわかるすぐれたお便りですので、

この意味からもご参考になると考え、載せることにしました。

冗長に思われる部分は飛ばし読みして下さい。

 

******患者さんの御家族からのお便り******

(最初のお便り)

はじめまして。広島県在住の****と申します。母の病気の件で、いろいろ お便り34の実物写真 と調べている中で、こちらのホームページを見つけてメールをさせていただいてます。

発端は、9月8日の朝7時頃に、同じ町内に住んでいる母が自宅の階段で急に動けなくなり、近くの**病院に救急車で運ばれました。

病院に着いてからCT・MRIの検査をしたところ、左脳の血管で詰まりかけている部分が見つかりましたが、また脳梗塞は起こしていませんでした。念のため入院をすることになり、病室に入るまでの待ち時間の間に脳梗塞を起こしたようで、その日からすぐに点滴が始まりましたが、後遺症として言語の失効と右足のしびれなどが残りました。

入院2日目くらいから37度5分~38度8分の熱が続きましたが、座薬と解熱剤の処方と途中から抗生剤の点滴など行いました。(熱は12日くらい続きました)入院3日目からは、左の頭に突き上げるような痛みが(見た感じのイメージです)続き、食事も取れないような痛みだったので、ロキソニンを処方され、痛くなると飲んでました。主治医の先生は、肩を触って、肩こりからくる神経痛でしょう。とのこでした。

熱が下がった頃、頭痛もなくなり(9月19日ころ)点滴とワーファリンを併用して、薬の量を調整していたので、そろそろ退院できると思っていたら、9月21日の早朝、激しい腹痛でCTを撮って、内科の先生に診てもらったところ、脾梗塞の可能性が高いとのこと。救急車で運ばれた時に、不整脈もあったので、心臓のエコーの検査をしました。

心臓血管内科の先生に診ていただいたら、弁膜が完全に閉じてなく、血液の逆流があるとのこと。(入院のときにもエコーを撮っていましたが、その時は逆流はありませんでした)ばい菌がいる可能性があるので、カメラを飲んで検査を・・・とのことで診てもらうと、やはり弁にばい菌が付いて、弁に少し穴も開いているようだとのこと。

その病院には心臓の外科がないので、すぐに紹介をしてもらい、9月22日に**病院に転院。その日に、また一通りの検査をしてもらい、心臓血管外科の主治医の先生から説明を受けました。診断は、感染性心内膜炎、僧帽弁閉鎖不全約3度とのことでした。(持病に甲状腺機能亢進賞、糖尿病もあります)お話の内容では、血液検査のCRPが11.3、白血球が14800と高く、かなり厳しい状態で、すぐにばい菌を殺す抗生剤投与により、炎症をコントロールしていきます。場合によっては心臓の手術が必要になります。(感染が制御できない・大きなゆうぜいがある・心不全の進行の場合)そして、今の状態でもし手術になると、かなりリスクが高く、もし菌がなくなって、良い状態で手術をすればリスクは少なくなります。などの説明を受けました。

心臓ということで、家族である私たちもかなりのショックを受け、どうすればいいのかとても不安になりました。そして、9月27日の血液検査ではCRPが3.0、9月29日の血液検査では0.8と幸いにも菌の方は落ち着いてきているようなのですが、主治医の先生のお話だと、心臓の弁の手術はしなくてはいけないとのことで、人工弁に置き換える手術をタイミングを見てするようになりそうなのですが、人工の弁ともなるとやはり術後の経過なども心配で、何とか他に方法はないものかと考えておりました。

更に心配なのが、母が転院してからというもの、気持ちの落ち込みが激しく、言葉が話せない情けなさなどもあると思うのですが、毎日のように泣いて精神的にもまいってしまっています。長文になり申し訳ありません・・・

家族としては、心臓の手術ともなると、やはりかなりのリスクがあって、不安や心配も耐えません。本人にも安心して受けてもらうためにも、より良い環境での手術を望んでいます。こちらのホームページをみて、ここしかない!と思いメールをさせていただきました。宜しくお願いいたします。

*****(感染性心内膜炎、手術後のお便り)******

米田副院長先生

10月28日の心臓の手術は、母が大変お世話になりました。当日は、私と妹も子供を連れて名古屋へ行っておりましたので、術後の説明などで先生にもお会いできませんでした。

父から心臓弁の形成術と心房細動の手術まで無事に終えていただいたと連絡をもらい、とても安心して広島に帰ることができました。ありがとうございました。

術後に母の顔を見ていなかったので、11月2日にそちらに伺った際も、とても元気そうでリハビリにも励んでいる様子だったので、つくづく遠方でも米田先生に手術していただいて良かったね~と話をしたことでした。

(中略、事務的なご相談など)

父も広島に戻り、しばらくは母ひとりでお世話になります。退院の日程が決まりましたら、その前々日くらいには父が名古屋の方へ行くようにする予定でおります。
名古屋ハートセンターの先生方や看護師さんたちも、とても気持ちの良い方たちばかりで、安心してお任せしております。宜しくお願いいたします。

***(追伸、ここまでを振り返って礼状を下さいました)***

米田正始先生

母が脳梗塞で近くの病院に運ばれたのは、9月のはじめのことでした。検査の後、すぐに入院・治療となりましたが、失語症という言語障害が残ってしまいました。本人はもちろんのこと、家族としても大変つらい思いでしたが、なんとか前向きにリハビリにも励もうと思っていた矢先、入院から2週間が経ってそろそろ退院という頃でした。

お便り34の実物写真2 心臓の弁にバイ菌が付いて、弁を破壊してしまう感染性心内膜炎になっていると分かりました。すぐに血液の中のバイ菌をなくすための抗生剤の投与を開始して、できれば心臓の外科手術ができる病院に転院した方がいいとの話を聞かされ、とてもショックを受け途方にくれました。でも、一刻をあらそう状況でしたので、すぐに地元の心臓血管外科のある病院に転院し、点滴治療を開始しました。

転院してからすぐに、心エコー・血液などの検査をして、主治医の先生から聞かされた話は、私たち家族にとっては、本当につらいものでした。心臓の僧帽弁が菌によって破壊されていて、血液の中の菌の値も非常に高く、とても危険な状態だということ、まずは菌をなくさないといけないが、もし緊急手術ということになるととてもリスクが高いこと、心臓の弁は破壊されたものは元には戻らないから人工弁をいれるしか方法はないということ・・・本当にどうしていいか分からなくなり、もうどうしようもないのかと諦めかけていました。

そんな中、少しでも希望の持てる話はないか、いろんなことをネットで検索していて、「心臓 名医」で調べたら、米田先生のお名前を見つけたのです。リンクをたどっていくと、先生が管理されているホームページがあり、隅から隅まで必死で読みました。

いろんなページを見る度に、今まで暗くて不安な気持ちしか持っていなかったのが、すごく明るく希望に満ちた気持ちになりました。そこには、僧帽弁形成術という方法があることが書かれていました。

いろんなメディアでも活躍されていて、とてもそんな先生に手術はしてもらえないかもしれない。と思いましたが、そこに書かれている一言一言が信頼でき安心できる内容だったので、私はすぐに米田先生にメールを送り、母の状況を相談しました。先生からのお返事はすぐに届きました。患者やその家族を気遣っていただく言葉もあり、絶対にこの先生に母の手術をお願いしたいと思いました。母にも家族にも話をして、血液の菌が落ち着いて退院をして間もなく、名古屋に向かいました。先生とお会いして直接話を聞いて、母もとても安心したらしく、1週間後には手術となりました。

手術は僧帽弁形成術と心房細動の方まで治していただき、思った以上に回復も順調で、母もほんとに先生にお願いしてよかったと言っております。今まだ入院中で、広島に住んでおりますので、ちょっと顔を見に行くということはできないのですが、米田先生をはじめ北村先生、小山先生、深谷先生も看護師さんたちも、とても良くしていただいて、安心してお任せしております。

今回思ったことは、心臓手術という大変なことだからこそ、患者やその家族を安心させてくれる先生に出会えたことはとても重要なことだったということです。もちろん、リスクが0ということはありませんが、同じリスクがあるにしても、気持ちを大切にしてくれる先生方がおられたから、母もこの大変な手術を受けることができたのではないかと思ってます。母が退院の際は、また名古屋ハートセンターに伺うのを楽しみにしております。

Heart_dRR
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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