厚生労働省のデータでは平成21年の日本人平均寿命は男性79.6歳、女性86.4歳でした。
平均寿命とはご存じのとおり人間が何年生きられるか、という長さのことですが、
正確には少し違います。
たとえば今60歳の男性は、あと何年生きられるのでしょうか?
平均寿命79.6歳から考えて、すでに60年生きたから、差し引き19.6年でしょうか?
答えは違います。22.9年、ほぼ23年です。
この違いが生じた理由は、言葉の定義にあります。
あと何年生きられるかというのは平均「余命」で示されます。
そして0歳児の平均余命が平均「寿命」なのです。
たとえば60歳の方の場合であれば、0歳児とはさまざまな状況が異なるため、
平均余命は22.9年になり、異なる数字がでるのです。
厚生労働省が発表した年齢別平均余命は以下のとおりです。ご参考になれば幸いです。
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こうした平均余命が大切なのは、
患者さんが本来の健康状態ならあと何年生きられるかを考えることで、
治療の方法や意義が変わることがあるからです。
たとえば平均余命あと2年の方に心臓手術をするのは、
一般的には気がひける場合が多いです。
というのは手術ではある程度痛みをともないますし、
元気になるために、年齢によっては何か月かかかることもある。
そうやって苦労して頑張って、あと1年半しか生きられないとなると、
努力があまり報われないと感じる方もおられるかも知れません。
もちろんあと2年生きて、どうしてもやり遂げねばならない仕事があるとか、
どうしてもひ孫の顔を見てから逝きたいとか、
その方の想いがそれぞれありますから、
平均余命あと2年でも患者さんの熱いご希望によって前向きに手術することもあります。
また患者さんの中には「すでに70年も生きたからもう死んでも良い、手術もいらない」とおっしゃる方もあります。
地方ではこうした傾向が感じられます。
しかしたとえば70歳の女性の平均余命は19.6年です。
つまり手術で元気になって、他の病気をうまく予防すれば20年近く生きられる可能性が十分あるわけです。
それも楽しく生きる可能性があるのです。
「もう寿命」というのは現代にはあてはまらないという例です。
バイパス手術や弁膜症手術あるいは大動脈手術の中には、手術後の生活の質が向上することが多く、
あと20年も楽しく有意義に生きられるかもしれないのに、
今治療を受けずに逝ってしまって良いのですか、
とお聞きすることも少なからずあります。
こうしたことは患者さんの状態や患者さんご本人とご家族の哲学・人生観にもよりますので一概には言えないことですが、
少なくともあとどのくらい生きられるかを知っておくことは、
今後の人生設計を考えるうえで重要です。
そういうことでこの平均余命の表がご参考になれば幸いです。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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