右室二腔症は多くの場合心室中隔欠損症(VSD)をともなった先天性心疾患です。
名前のとおり右室の中ほどで右室の筋肉が異常に内側へ張出し、
右室が2つに分かれたような形となります。
右室二腔症の異常心筋の張出し部の前後での圧較差がそれほど高くない間はまだ安定感があるのですが、
年齢とともに張出しが強くなることが多く、
心臓が耐えられず危険なレベルに達します。
極端な場合は突然死などの恐れもでてきます。
下記の患者さんも右室二腔症の2つの右室の間の圧較差が極めて高くなり、
心不全症状の悪化とともに危険が迫る状態であったため手術を行いました。
異常心筋を注意深く徹底切除し、三尖弁の乳頭筋は温存しつつ、
2つの右室の間の圧較差がゼロになるところまでになりました。
心室中隔欠損症はパッチで閉鎖しました。
それらの心臓手術の結果、正常の心臓を取戻し、すっかり元気になられました。
右室二腔症の性質上、永い間、この病気と向き合い、悩んでこられたようで、
退院のとき、手を握って「第二の人生をありがとうございました」としみじみ言って下さったのが忘れられません。
手術から一年が経ち、すっかりお元気な生活や仕事を取り戻された患者さんから以下のお手紙が来ました。
淡々とした筆致のなかに、あの時の患者さんの決意と頑張りを私は感じました。
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拝啓
米田正始先生
昨年5月**日、右室流出路狭窄解除術及び、心室中隔欠損パッチ閉鎖手術を受けました**市の**です。
その節は先生はじめ皆様に大変お世話になり有難うございました。お陰さまで順調に回復し、新年を迎えることが出来ました。
手術前には長い坂道や階段を登る時など息切れがし、心臓に大きな負担がかかっていましたが今では見違えるほど楽に体が動かせるようになりました。仕事も術後3ヶ月弱で復帰することができました。日々健康の有難さを感じております。
思い起こせば、地元の病院(**病院)での検査で右室二腔症・心室中隔欠損症(VSD)の診断を受け、このままだと心臓の負担が大きく心不全等をおこす可能性があり、なるべく早い手術を勧められ、米田先生を紹介していただきました。
心臓外科手術ということで様々なリスクが思い巡り、地獄に突き落とされた思いでした。
しかし、名古屋ハートセンターのホームページ・米田先生のブログを拝見し、また手術説明を丁寧に解りやすく話していただいたお陰で、不安な気持ちもなくなり安心して手術を受けることができました。入院生活もスタッフの心遣いで快適に過ごすことが出来ました。
ご多忙のなか健康には十分留意してください。次回5月の診察にお会いできるのを楽しみにしています。(後略)
敬具
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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