二尖大動脈弁(大動脈二尖弁)はかつては単なる弁膜症とみなされていましたが、
現在は研究が進み、
弁だけでなく大動脈の病気でもあることがわかっています。
そのため昔、大動脈弁の手術を受けた患者さんでも、
長年月の間には大動脈が拡張し瘤(こぶのように大きく)となることがしばしばあるため注意がひつようです。
実際、昔どこかの病院で大動脈二尖弁の手術(大動脈弁置換術)を受け、
5-15年して大動脈が拡張し瘤になって
私のいる名古屋ハートセンターへ来られる方が何人もおられます。
以下の患者さんは5年前、別の病院で大動脈二尖弁のため大動脈弁置換術(略称AVR)を受けられました。
最近上行大動脈が拡張し破れそうになっていることが判り、
かかりつけの先生からのご紹介で私の外来へ来られました。
外来でCTその他で調べたところ、
上行大動脈から弓部大動脈までかなり大きくなっており、
その拡張速度も速いため、心臓手術(再手術)することにしました。
手術では前回手術のための癒着(心臓と周囲の組織がくっついてそのままでは手術できない状態)があり、
これを丁寧に剥離し、それから上行大動脈から弓部大動脈まですべて人工血管で置換(弓部大動脈全置換術)しました。
再手術の、それもけっこう大きめの手術でしたが、
経過良好でまもなくお元気に退院されました。
これによって今後、大動脈の心配はほぼ解消し、患者さんはお元気な生活に戻られました。
下記の手紙は患者さんが他の方のお役に立つようにと、書いてくださったものです。
二尖弁の患者さんは、弁の手術後でも専門家のところで毎年定期健診を受けることがお勧めです。
これによって安全が確保できるようになるでしょう。
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私は73才女性です。高血圧等で長年、近くのH医師の診察を受けています。
心臓に問題があるからと68才の時、T病院で大動脈弁の弁置換術をしました。
その時普通は3枚の弁が2枚しか無い(註:二尖弁)と知りました。
定期的にH医師の診察を受けていましたが、22年10月に「大動脈瘤があります。
信頼できる良い医師を紹介するので、是非、すぐ、診てもらいなさい」と言われました。
すっかり良くなったと信じていましたので、不安半分で息子・妹に付き添ってもらい、10月5日にハートセンターの米田先生の診察を受けました。
採血・CT等検査の後、緊急ではないので様子を見ましょうと、3ヶ月後再受診となりました。
大きくなっていませんようにの願いもむなしく、「H医師と相談の上、手術するかしないか決めてきてください」と言われました。
3週間後手術の決心をして米田先生に伝えました。初診から手術まで約4ヶ月の速さでした。
運が良かったと今は思います。
開胸手術も2度目の方がリスクが高いと言われましたが、先生に全幅の信頼を寄せました。
というのも最初の診察から手術まで私達に解り易く、何度も何度も丁寧に説明して下さったからです。
二尖弁が大動脈瘤になりやすい要因であることが、ここ2~3年前に解ったこと、どこからどこまでを人工血管に取り換えること、2度目のリスクとして癒着があると出血しやすく、その分手術時間がかかるけれど万全の態勢で臨むこと・・・。
一つだけ残念なことは、それだけのご説明を受けても、動揺している私の頭の中は真っ白で、付き添ってくれた息子達に家に帰ってから説明してもらい理解したことです。
ただ先生のご説明して下さっている様子からおまかせしたいという安心感だけ受け取りました。
術後すぐに先生から娘・妹に手術の結果とこれからの注意点のご説明がありました。
患者だけでなく付き添う身内にまできめ細やかな心くばりがありました。
現在順調な生活をしています。
本当にありがとうございました。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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