川崎病そのものは
ガンマグロブリン療法その他の治療法が確立したおかげで
患者さんたちは早期発見・早期治療を受ければ安全安心な生活を続けられるようになりました。
しかし冠動脈瘤をはじめ、冠動脈とくに内膜に傷がつくと長期的に注意が必要です。
手術事例、患者さんは34歳男性です。
7歳のときに川崎病を患われましたが回復されました。
その後、何度か心臓カテーテル検査を受け、冠動脈瘤を指摘され定期検診を受けていました。
このところ検診を受けずに元気に暮らしておられましたが、
1か月前に地下鉄の階段を上がるとき息苦しくなり近くの病院を受診されました。
そこで狭心症の疑いとなり当院へ紹介されました。
検査の結果、冠動脈瘤と冠動脈の狭窄が数か所見つかり(写真上左と上右)、
冠動脈瘤の部分を中心に石灰化も強いため、
カテーテル治療(PCI、ステント)よりも冠動脈バイパス手術が適しているという判断で手術となりました。
手術は体外循環を使わないオフポンプ冠動脈バイパスを行いました。
まず左内胸動脈を左前下降枝ついで対角枝に取り付け(術後写真左)、
さらに右内胸動脈を中間枝に(術後写真右)付けて完了しました。
良好な血流パタンと良好な心機能を手術中に確認して手術を終えました。
術後経過良好で外来フォローとなりました。
心臓手術からまる2年が経ちました。
お元気で定期健診のため外来へお越しになります。
術後2年の冠動脈CTでもバイパスグラフトはすべてきれいに開存していました。
川崎病の患者さんの冠動脈内膜は傷がついていることがよくあり、
こどもの間以上に大人になると注意が必要です。
普通の生活習慣病以上のスピードで動脈硬化が進む懸念があります。
しかしできるだけの予防、定期検診、早期発見によって安全を確保することはできるでしょう。
いざ冠動脈が危険レベルにまで狭くなった場合は、そのパタンにもよりますが、
冠動脈バイパス手術が役立つことが多々あります。
内胸動脈の優れた内膜(強力な動脈硬化抑制作用があります)のおかげで冠動脈や心臓が守られるからです。
こどものころに川崎病の既往のある方、
とくに冠動脈瘤と言われたことがある方は川崎病を熟知した専門医にご相談下さい。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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