◾️内科の先生から突然、手術を勧められました、、、
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Q9. 内科の先生から心臓手術が必要になりそうな話を聞きました。
突然そういわれても困りますし、
なっとく行くだけの十分な説明が受けられませんでした。
→→→
A9: 心臓手術が必要かも知れないと外来で検査のあと突然言われて
びっくりし戸惑う患者さんが少なくありません。
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とくに症状が強くない病気たとえば大動脈瘤や僧帽弁閉鎖不全症の一部、
あるいは大動脈弁閉鎖不全症の一部では
左心室や大動脈がかなり危険な状態になっていても、
患者さん自身が感じる症状、いわゆる自覚症状は軽いことが少なくありません。
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そうした状況で、外来の先生(通常は内科)に心臓手術の話を持ちかけられても
目が点になるような状況、
「えっ?なんで私が?手術?」状態になるのはよく理解できることです。
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◾️その心は、、
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内科の先生は内科が専門ですから、
手術の詳細まではわからないこともよくあります。
現代は医学医療も細分化され、
循環器内科の先生といえどもあらゆる心臓手術を熟知しておられないことはあります。
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たとえば冠動脈(狭心症など)の専門家は弁膜症にあまり関心がない、
などのケースは耳にします。
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また研究畑を歩んでこられた先生の中には、実際の患者さんを治したり長期間安全を確保するなどの作業はまったくできないケースもあります。
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それは悪い意味ではなく、
それほどそれぞれの分野に打ち込んでおられるとも言え、
そこで餅は餅屋、チーム医療の大切さが再認識されるわけです。
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◾️そこで手術の説明は外科医からも
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心臓手術が必要かも知れないと言われたとき、
熟練の心臓外科医に一度話を聴くことはそういう意味で大切です。
内科と外科の両方から話を聴くことで、
より多角的な情報が得られ、
矛盾点があると感じたらどんどん質問すれば良いのです。
その質問にきちんと答えられないようなら
さらに他の医師の意見を求めると良いでしょう。
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実際、内科と外科の両方の意見を聴くのは
冠動脈の治療では欧米では常識というより義務付けられる方向にあるほどです。いわゆるハートチームですね。
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チームの合意を得てはじめて立派な治療ができるという考え方です。
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私たち心臓外科医も冠動脈、弁膜症、大動脈、心筋症・心不全、先天性心疾患、など守備範囲が広いため、
それぞれのブレーンを院内外、国内外にもち、
おたがい切磋琢磨しながら常にベストを目指して協力体制で臨んでいます。
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◆患者さんの想い出:
Aさんが心臓手術をもとめて私の外来へ来られたのはもう10年以上前のことです。それまでは心臓手術のことは考えておられなかったようです。
慢性腎不全で血液透析中の、狭心症でした。
冠動脈はぼろぼろに壊れていました。カテーテル治療PCIでは限界と言われての来院でした。
しかしバイパス手術なら良質の血管を使って再建するため行ける!と確信したためオペに踏み切りました。
術後経過は順調で心機能は改善し、透析も楽にこなせるようになり元気に退院して行かれました。
その後は個人的にもお付き合いができちょくちょくお店へ行って美味しいお茶を戴いて、そのままでは無銭飲食のようで気が引けるため、健康相談などしてから帰宅したものです。
私が京大病院で重症への心臓手術ばかりして一部のひとたちの不興を買ってトラブったときも、Aさんはテレビカメラの前で堂々と論陣を張って私を弁護して下さいました。
その後、下肢の血管が悪くなり、当時勤務していた豊橋ハートセンターに来院いただき、血管を治すお世話もさせて頂きました。
最後はがんが見つかり、そのために次第に体力が落ち、近くの病院で静かに息を引き取られました。
最後まで心臓だけは元気で、いのちを支えてくれたと主治医の先生が仰って下さったのが救いでした。
心臓手術を介しての出会いでしたがそれ以上の絆があったと思います。Aさんのことをいつまでも忘れることなく日々精進したく思います。
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◆参考ページ
心臓手術とはどういうもの?
そのこれからの方向は
心臓外科の名医とは
さあ手術と言われたら?!
安全に必要な症例数は?
病院の立派さと心臓外科の立派さは別?
対象となる病気は?
私のお勧めは?
術後の社会復帰について
美容について
術前のオリエンテーション:
米田正始が考案した術式は
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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