最終更新日 2020年2月15日
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◼️ミックスによる大動脈弁形成術とは?
大動脈弁を修復しきちんと開閉するようにするのが大動脈弁形成術ですが、これを小さい傷跡で行うのがミックスMICSの大動脈弁形成術です。
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■まず大動脈弁形成術の進歩
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近年は一部の施設で大動脈弁でも形成の努力がされています。
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大動脈弁形成術は、
大動脈弁の構造がもともと弁尖のかみ合わせが少なく、
糸で吊り上げる構造もなく、
僧帽弁よりも手技が難しいことは広く知られていました。
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そこでかつては大動脈弁形成術と言えば比較的シンプルなこどもの心室中隔欠損症という病気にともなう弁の下垂に対する弁形成術や、
弁輪拡張タイプのケースに対する弁輪形成術、
あるいは弁のヒンジ部の大動脈拡張に対するサイズ合わせが主でした。
上図にその一例を示します。
■二尖弁での弁形成
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その後、二尖弁が構造が簡単なため、
形成もやりやすいということが知られるようになり、様々な大動脈弁形成術が開発されました。
交連部つまり弁のヒンジの部分で形成するトラスラーTrusler先生の方法や、
弁の中央部で形成するコスグルーブCosgrove先生の方法などが代表的です。
その後Shaefers先生らの方法が効果を上げ、effective height(弁尖の有効高)を確保するために、VAJ(弁輪下部)やSTJ(弁輪上部)のサイズ調整をするようになりました。
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手術を受ける患者さんも10代ー30代の若い方が多く、
弁形成のメリットが一層大きく、
やりがいがあるという事情も大動脈弁形成術を後押ししたかも知れません。
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何しろ長い間、ワーファリン無しで普通の元気な生活が確保しやすい弁形成術ですから、
他の方法、たとえば生体弁置換術や機械弁置換術よりも安全上も生活の質QOLでも有利です。
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■MICSの導入、まず正中MICSで
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それらと平行してミックス(小切開低侵襲心臓手術、代表格がポートアクセス)は大動脈弁手術にもおよび、
私たちは安全優先の観点からあまりその導入に積極的ではありませんでしたが、
ミックス手術と大動脈弁形成術の経験が増えるにつれ、
これらを同時に安全にやるケースがあっても良いのではないかと考えるようになりました。
患者さんのQOL(生活の質)や満足度が格段に高くなるからです。
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大動脈弁形成術のミックスでは右側の胸を小さく切る方法(上図の真ん中、ポートアクセス手術)と、
胸の中央部で骨をL字型に切る方法(図の右端)などがあり、
私たちはその患者さんの状況にぴったり合ったものを選ぶようにしていました。
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左の写真は大動脈弁形成術後、1か月の創部です。
上図の右端のミックスを行いました。
複雑な弁形成術になる場合でも安全性を確保できるよう、こうした方法を適宜もちいます。
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その後、創をよりお腹側へずらして行う胸骨下部部分切開によるミックスで、さらに痛みの軽減、回復の促進、そしてより美しい仕上がりを図るようになりました。
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これまでの胸骨正中切開(図の左端)でのメリットつまり視野の良さや安全性をそのまま維持し、
しかしミックス手術によって術後の苦痛を減らし、早い回復と早い社会復帰を促進しています。
患者さんがお若いかたが多いため、
仕事に早く復帰することの意味が大きく、
ミックス(MICS)による大動脈弁形成術はよろこばれています。
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■ポートアクセスMICSの展開
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この3-4年はそれらのノウハウの蓄積をもとに、ポートアクセス法MICSによる腋窩下アプ ローチ(Subaxillary Approach)で骨を切らない、創もちいさく目立たない、痛みも少ない大動脈弁形成術を多用するようになりました
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(写真右、創は大胸筋の後ろ側に隠れています)。
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この方法には熟練が必要ですが、経験豊かなチームなら術後の経過もよく、創のきれいさと見えにくさが際立っています。
働き盛りの方々には早い仕事復帰を、若い方々には早期の学校生活や体育授業への復帰とこころの傷を小さくすることがメリットとなるでしょう。
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今後、さらに経験の蓄積によって、
一層患者さんのニーズに合った心臓手術を展開させていくつもりです。
参考:いい心臓・いい人生 【第九十三号】カナダでも頑張りました(大動脈弁形成術サミット)
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メモ: 高齢者の患者さんから大動脈弁形成術を依頼されることがあります。
もちろん弁が形成に適する状態であればときには形成術を考慮する場合もあります。
しかし通常はご高齢の方には生体弁を使用し、余裕ができたエネルギーをミックスに使うことが多いです。
というのは高齢者とくに70歳以上の場合は生体弁が長持ちしやすく、20年ちかく持つという報告もあります。
それならば弁形成より短時間で完了できる生体弁が有利なことも多いわけです。
すべて治療法はその患者さんにとってオーダーメイド的に一番良いものを選ぶあるいは組み立てるのが正解と考えています。
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お問い合わせはこちらです
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参考ページのIndex:
とくにポートアクセスとは
同法の位置づけは
同法が前向きに安全な場合
美しいLSH法とは? かかる費用は?
ハートポートとは
ミックスは危険なの?
術後の痛み軽減について 社会復帰が早いわけは? 美容について
胸骨「下部」部分切開法とは
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法・3弁手術
大動脈弁
ミックスによる弁置換術
同、デービッド手術
ポートアクセス法による弁置換
患者さんやご家族からのお便り
お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん
お便り48: ミックスですみやかに社会復帰された患者さん
お便り50: 大動脈二尖弁と上行大動脈瘤の患者さん
お便り61: ミックスのデービッド手術のため三重県からお越し下さった患者さん
お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん
お便り70: 自己心膜で大動脈弁形成術(再建術)をミックス法で受けた患者さん
お便り71: 同法で大動脈二尖弁形成を受けた15歳の患者さん
お便り72: 二弁置換とメイズ手術を同法で受けた患者さん
お便り73: リウマチ性連合弁膜症と心房細動をミックス法手術で克服
お便り78: ベントール手術をミックスで受けられた患者さん
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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