心臓手術が必要です、と言われても肝臓が悪い患者さんには大変悩ましい状況です。
医師のほうでも肝不全つまり肝臓が悪い患者さんの心臓手術が危険であることは皆知っておられますから、手術が必要とわかっていても現実にはそのまま様子をみて、次第に患者さんは亡くなって行くというのがよくある姿です。
しかし肝臓が悪いだけで本当に心臓手術ができないのでしょうか?
まず肝不全が心臓の病気のためか、肝臓そのものの病気のためかの見極めが大切です。
たとえば同じ肝臓不全・肝硬変でもC型肝炎のあと何十年も経ってからの肝硬変と、心不全のためのうっ血性肝硬変では様子も経過もちがうことがあります。
なかにはC型肝炎とうっ血があわさった状態の患者さんもおられます。その場合はどちらの要素が多いかも重要です。
心不全のための肝不全・肝硬変なら心臓を治せるときにはある程度肝臓への負担を減らすことができます。肝臓への負担が減ったとき、ある程度以上もちなおす肝臓であれば、その心臓手術は心臓だけでなく肝臓をも助けることがあるわけです。
こうした光が見える患者さんに対して、私たちは全力をあげて心臓手術によって心臓と肝臓の両方を治し、患者さんがもっと長く生きられるように、もっと元気に生きられるように努力しています。
その一方、肝臓そのものの病気のために肝不全・肝硬変になっている患者さんであれば、手術の効果や意義は不明のこともあります。こうしたケースでは無理をしないようにしています。無理をすると、いくらよかれと思っての手術でも、患者さんの寿命を縮めることがあるためです。
私たちの経験でこれまでに肝硬変・肝不全で心臓手術を行い、元気に社会復帰して戴いた患者さんの多くは、連合弁膜症にともなう高度の三尖弁閉鎖不全症やペースメーカーのための三尖弁閉鎖不全症、あるいはかつて何らかの理由で三尖弁置換術を受けられた患者さんの再弁置換術などがあります。心筋症・心不全による三尖弁閉鎖不全症のケースもありました。
こうした経験を活かし、単に心臓だけを治すという治療ではなく、心臓手術前にある程度時間をかけて肝をできるだけ回復させておいてから、オペを行い、それによって心不全を軽快させ、肝臓の負担をさらに減らすという一貫した全身プログラムで臨んでいます。
肝臓がだめだから心臓手術もダメと言われたら、早めにご相談下さい。肝がとことん壊れている時には難しいかも知れませんが、まだある程度機能や回復力を残している場合は道が拓けることが多々あるでしょう。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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