腹部大動脈瘤は直径5㎝にまで大きくなるか、6か月で5mm以上拡大すると何らかの手術が必要となります。腹痛や圧痛、背部痛あるいは塞栓症状などの症状があるときも同様です。
しかし心臓血管手術の場合、得られるメリットとよく比較検討することが大切です。欧米での腹部大動脈瘤手術の死亡率は2.7-5.8%と報告されています。日本ではもう少し低く1%程度でしょうか。私たちの経験では1%未満で、待機手術ならほぼゼロです。
手術が緊急になったり、高齢、腎不全、肝硬変、心臓や肺の病気などがあると死亡率は高くなります。
その一方、手術のリスクを下げるため、EVAR(ステントグラフト)は開発されました。
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欧米の主要な学会からのガイドラインは患者の状態に合わせたオーダーメイドな治療を勧めています。たとえば患者さんの年齢、リスクファクター、瘤の構造やサイズ、手術する外科医の経験量などが大切です。
全体としていえることは
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1.従来型の外科手術は手術が安全に行える若い患者さんによく勧められています
2.EVAR(ステントグラフト)は外科手術が危険でEVARに適した大動脈や瘤の形があるときに勧められます
3.EVARはそれに適した大動脈や瘤をもち、外科手術はそれほど危険ではないが長期間安定できないときに勧められます
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私たちの経験では、腹部大動脈瘤は確実に治せる病気になりました。そこで手遅れになることだけは避けて頂きたく考えています。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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