急性大動脈解離、つまり大動脈の壁が急に内外に裂ける病気はタイプによっては急速に死に至る大変な病気です。
しかし現代の心臓血管外科・循環器内科・救急救命科の水準は高くなり、熟練したチームなら急性大動脈解離の大半を救命できるようになりました。
そこでもガイドラインが活躍しています。
日本循環器学会のガイドラインは、大動脈疾患のエキスパートが多数集まって、十分な検討のうえで作成された指針です。
これを踏まえることで、個々の患者さんやその病院の特徴を加味して正しい治療法が選択しやすくなっています。
◆スタンフォードA型急性大動脈解離の治療ガイドライン(抜粋要約)
偽腔が開存しているときの緊急の心臓血管手術
偽腔の破裂、再解離、心タンポナーデ、脳循環障害、大動脈弁閉鎖不全症、心筋梗塞、腸管虚血、四肢血栓塞栓症などがあるときの心臓血管手術
クラスIIa つまりお勧めできる治療は
血圧コントロール、疼痛に対する薬物治療に抵抗性のときの心臓血管手術
◆スタンフォードB型急性大動脈解離の治療ガイドライン(抜粋要約)
合併症のない偽腔開存型および偽腔閉塞B型解離に対する内科治療
偽腔の破裂、再解離、心タンポナーデ、脳循環障害、大動脈弁閉鎖不全症、心筋梗塞、腸管虚血、四肢血栓塞栓症などの場合の心臓血管手術
クラスIIa つまりお勧めできる治療は
血圧コントロール、疼痛に対する薬物治療に抵抗性の大動脈解離に対する心臓血管手術
血圧コントロールに対する薬物治療に抵抗性の大動脈解離に対する内科治療
詳細はガイドラインをご参照ください。日本循環器学会HPなどで見ることができます。
急性大動脈解離のA型は最初の2日間に半分の患者さんが亡くなる恐ろしい病気で心臓血管手術が緊急で必要ですし、B型も通常は内科治療つまり点滴やお薬で行けますが、心臓血管手術が必要となることがあるわけです。
なおステントグラフト(略称EVAR)は前もって人工血管をデザインし作成する必要から、現時点では緊急手術が多い急性大動脈解離には使えないことが多いです。
ともあれ、大動脈解離と言われれば至急、経験豊かなエキスパートに相談するのが理想的でしょう。
メモ: かつて急性大動脈解離の患者さんが、やや時間が経ってから病院へ来られ、緊急手術の準備中に死亡されたことがあります。
あと1時間早く来て下されば救命できたのに、という悔いが残っています。
こうしたことが起こらないように、強烈な胸痛や背部痛が突然起こればすぐ病院へ行きましょう。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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