お便り51: 肝硬変と多弁置換再手術を乗り越えた患者さん

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Ilm09_dd05001-s心臓弁膜症では永い間に修復した弁が傷んだり、人工弁それも耐久性を誇る機械弁さえ機能不全に陥ることがあります。弁そのものが大丈夫でもパンヌスと呼ばれる自己組織が伸びて弁の作動を妨げることがあるからです。

さらに長年月の間に心不全やうっ血のため肝臓などの内蔵が壊れることも少なからずあります。あるいは昔の心臓手術の際にC型肝炎となり、その後肝硬変、場合によっては肝臓がんとなっての闘病生活ということさえあります。昔は肝炎の検査法が未完成でC型肝炎などは防ぎづらい病気だったのです。

以下のお手紙の患者さんは昔、九州の大学病院で、僧帽弁と大動脈弁の機械弁による弁置換と、三尖弁形成術を受け、その後、長年お元気にしておられましたが、パンヌスの生成のため大動脈弁が壊れてしまいました。Omm05_ikm001-s

三尖弁も長年の逆流のため劣化が著しく、高度な三尖弁閉鎖不全症となりました。それによる肝臓うっ血と昔の心臓手術の際のC型肝炎のために肝硬変に進行していました。Child分類(チャイルド分類)でB型(つまりかなり悪い状態)の肝硬変は大きな心臓手術とくに再手術に耐えられない恐れもありました。

さまざまな工夫をしててきぱきと大動脈弁を新たな機械弁で取り換え、三尖弁は弁がもはや使えないほど壊れていたため生体弁で弁置換しました。

入念な術前準備、体調管理のおかげで術後はうそのように経過が良く、翌日には集中治療室を無事退室されました。

しかしそれから肝臓の疲労が蓄積し、肝機能が低下し、ふたたび集中治療室で治療が必要となりました。危険な状態がしばらく続きました。それらを乗り切ったあとは次第に元気になられ、退院のときには手を握り、お互い涙が出てしまうほど感動しました。

以下はその患者さんからのお手紙です。ほんとうによく頑張って下さったと今も感慨深いものがあります。

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米田正始先生

早いもので、先生方に治療・手術をしていただいてから5ヶ月近く経ち、今日こうして元気に外来できましたことに心から感謝しております。

私も昨年10月26日退院以来、地元の大学病院に通院して治療を続けております。

その間、貧血のため検査入院をし、造血剤の投与などを受け、現在順調に推移しています。

自分自身、病識のなかったことを痛感しており、今後私と同じような状態にある人に対して、名古屋ハートセンターの先駆的な取り組みの素晴らしさや医療技術の高さ等と私の体験を話して、早期の診断・治療を受けるよう勧めていきたいと考えています。

当初の予定では、11月22日に外来診察を受けるところでしたが、前述のとおり、貧血のため検査入院が必要となり、今日の外来となりました。

今日の検査結果を受けて、種々ご指導があるかと思いますが、それに基づいて今後も治療を続けていきたいと考えておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

先生方は、わたくしたち病者の救いの手であり、希望のひかりであります

何回言っても言い尽くせませんが、本当にありがとうございました。

時節柄、健康には十分留意され、今後の活躍をお祈りいたします。

平成24年1月19日

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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