臨床に用いた時期 2003年―2009年
実施した施設 京大病院、名古屋ハートセンター
考案の目的と概略
虚血性僧帽弁閉鎖不全症で弁尖のテザリングが高度なケースでは僧帽弁輪形成術が通用しない。
生理的には乳頭筋先端から二次腱索を介して僧帽弁輪前中央部へ力がかかるため、
この方向に人工腱索を立て、左室を保護改善してから、自然の二次腱索を切断した。
これによって従来の二次腱索を切断する 術式よりも術後心機能が改善し患者の心不全が軽減した。
この術式は後に両弁尖形成法(Papillary Heads Optimization)へと発展していった。
上図は権威あるJTCVS誌の表紙に掲載されたときのものである。
左図は臨床でのデータを報告したものである。
内容の説明
人工腱索を各乳頭筋ヘッドから僧帽弁輪の前中央部へ吊り上げ、
併せて二次腱索を切断する。
その後、積極的な吊り上げによって二次腱索の切断は不要となった。
これによって左室機能は保護あるいは改善され、僧帽弁前尖のテント化は軽快―解消する。
上左図は動物心で左室Viewを示す。
左図は臨床例の成績を示す。
左図は乳頭筋先端にゴアテックス糸CV5を刺入しているところ、
右図はそのCV5を僧帽弁輪の前中央部から左房側へ刺出するところ。
このあと適切な張力のもと、プレジェット付で結紮する。
この術式によってMRやテザリング高のみならず、左室収縮機能も改善した。
糸による左室形成術という位置づけで、機能性MRは心室の病気でその治療は心室を治すことが本質的と考える中で、この術式は妥当なものと考えられた。
発表論文(臨床の第一報)
Masuyama S, Marui A, Shimamoto T, Komeda M. Chordal translocation: secondary chordal cutting in conjunction with artificial chordae for preserving valvular-ventricular interaction in the treatment of functional mitral regurgitation.J Heart Valve Dis. 2009 Mar;18(2):142-6.
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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