心室中隔欠損症(略称VSD)はこどものころに検診で診断され、穴の大きな方はこどもの時期に手術で治すのが一般的です。
しかしさまざまな理由で診断がつかなかったり、あるいは手術の決心がつかなかったりで大人になって手術を受ける患者さんも少なくありません。
この病気の場合は血液が左室から右室へ漏れるため、その量が多いケースでは次第に心臓の負担が蓄積して長期的にはさまざまな問題が起こります。
逆に穴が小さいときには自然に閉鎖して治るため、心臓手術が不要です。
そこで心臓手術をすべきかどうかの判断や、患者さんがその判断に納得され、決心できる状況・環境が重要になるわけです。
まして患者さんがエホバの証人の信者さん場合、輸血は信仰上の理由からできませんので、リスクが上がり、手術の判断・決断はいっそう微妙となります。
つぎのお手紙はこうした状況の20代の患者さんが、長い間悩みに悩み、またご自身で勉強もされ、縁あって私の外来に来られてじっくり相談し、そののち手術で見事に健康を回復されたあとの礼状です。
この患者さんの場合は、穴が大きく、肺に流れる血液量が全身に流れる血液量のなんと5倍に達し、そのため肺動脈弁も狭くなって(肺動脈弁狭窄症)いましたのでどちらも直し、手術の効果は大きかったです。
「寒さに震えたものほど太陽の温かさがよくわかる」という諺がありますが、それを想い出させてくれるような、つらい日々から脱却された喜びが伝わってきます。
************患者さんからのお手紙*********
米田 正始先生
今年の4月4日に心室中隔欠損症の手術をして頂きました。****です。
先日11月22日に検査して頂き、とても良い結果だったこと、米田先生の方からわざわざ会いに来て下さったことはとても嬉しく、感謝しております。
「もう普通の健康体と同じ」と言って頂けた事は、今でも信じられないほど嬉しい言葉でした。
4月4日と11月22日は自分の人生の中でとても重要な日になりました。
せっかく健康になったのだから何か新しい事に挑戦してみたいと思いパソコン教室に通い始め、つい先日ワードの資格を取ることができました。
これからもっともっと色んなことに挑戦していきたい思います。
手術をして頂いてから本当に自分の世界が変わりました。
今年は本当に良い年だったと心から思えます。
毎年寒い時期は調子が悪く年末になれば仕事も忙しいため、気分も沈みがちですが、今年はとても穏やかで前向きな気持ちで過ごすことができそうです。
両親も健康になった自分を見てとても喜んでいます。
これらは米田先生や北村先生、深谷先生、小山先生、そして名古屋ハートセンターの皆様のおかげだと思っております。
心から感謝しております。
本当にありがとうございました。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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